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第47話
トントン小気味よい音に合わせ、少しずり落ちたズボンから大きなフッサリした尻尾を左右に振って夕飯の支度をする。
「後は電話が来てから、もう一回火を入れればいいや」
夕食の準備があらかた終わると、土鍋の蓋を閉めてソファーに寝転がる。
部屋の隅にはきちんと畳まれた洗濯物が置かれ、奥の部屋にはフカフカの布団。
――こんな穏やかな時間って初めてかもな
ソファーの肘かけを枕に寛ぐ。隠さなければならない正体を気にしなくていいだけで、こんなにも心が安らぐとは思わなかった。
いつの間にか髪の間から覗く狼の大きな耳の先が情けなく折り曲がると、瞼が重くなってくる。
「なんか眠い……」
すっかり瞼が閉じると同時にテーブルの上に置いた携帯電話の音にパチリと目を開ける。
手に取って画面を確認すると実の文字が表示されていたので慌てて通話ボタンを押す。
「もしもし……」
『銀? あと40分くらいで家に着くから』
「あぁ、分かった」
『よろしくね~それじゃ』
通話が終わると大あくびをして伸びをする。いつもこの時間は女を探して寒い外を歩き回っている頃だ。
それを思うと今日一日の自分を振り返ってソファーにあったクッションを胸に抱いて体をゴロゴロ揺らす。
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