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第42話
鍵を掛け一人きりになった部屋。リビングのソファーに倒れ込み忘れる前に実の携帯番号を登録して伸びをする。
「平和だぁ」
のんびりとした朝は何日ぶりだろうか?
コソコソ着替えて起きた瞬間から今日の寝床は確保できるか、飯には有り付けるのかと考えキリキリと張りつめた重い朝。
一人でひっそり生きたいと願っても、中途半端な俺には山でも人間界でも一人で生き抜く力がない。
仲間もいない相談が出来る狼も人間すらも居なくて、いっそ死んでしまおうかとも考えたが、本能なのか意地なのか悔しくてやめた。
「洗濯して布団干し。献立考えて買い物にもいかなくちゃな……あと掃除もしないと」
いつもと違う忙しさは四六時中、気を張り詰めるどころか気が抜けて頭にぴょこんと狼の耳が生えるほどに。
――安心しすぎるのも危険だよな。
などと思いながらも、ソファーから起き上がって座るとフサフサの尻尾がスウェットのズボンをずり下げていた。
手作りの財布と渡された名刺を見ながら部屋の主である実のことを考える。
「お菓子を作る? 企画するって言ってたよな……店で売ってるのかな? 買い物行った時にでも探してみるか」
呟きながら手作り財布を見て苦笑いを浮かべ、日があるうちにと動き始めた。
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