立待月

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第38話

5時15分。携帯電話の振動で目が覚めた。昨晩、目覚ましをセットしておいたものを前足で携帯の画面をタッチして止める。


 そのまま起き上がり、前足を伸ばして体を震わせた。朝食の準備をするのに狼の姿から人の姿になり服を着る。



「よく寝た……朝食はパンとコーヒーだっけか?」



 初日だし余裕を持ってと早起きをしたのだが、どんなに遅くても10分もあれば準備は終る。


――早起きしすぎたかな


 大きな欠伸をしながら部屋のカーテンと窓を開けると、まだ薄い日が見える程度だったが、なんとも清々しい朝。


 いつもは、ほとんど裸の状態で女と寝ている自分の姿が人であるか確認しホッと胸をなでおろす。


 そして眠る女に気づかれないように、こそこそ気を使って部屋から出て行くのを思うと、自然体でいられる気楽さに感動すら覚える。



「朝食にサラダも付けてやるか」



 人の姿をしていると冷たい風が体に応えるので、窓を閉めてエアコンをつけた。


 ヤカンを火にかけてから、冷蔵庫を開けて野菜を取り出して調理にかかる。清々しい朝に顔も緩んで鼻歌交じりにサラダを作る。


 お湯が沸いて自分の珈琲を淹れ、一息つくと実を起こす時間になっていた。

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