第36話

実は「分かってる」と舌を出して返事をする。本当に正体不明で年齢も幼い子供みたいな部分もあるが、大人な振る舞いも出来ない訳じゃない。


――何者なんだ?


 頭を悩ます俺をよそに、実はテーブルからカップを手に取ると、温くなった珈琲を一気飲みした。



「部屋に戻るね。おやすみ! あっ、今度からコーヒーはもう少し薄めで」


「あ、うん。おやすみ」



 疑問に心を覆われたまま俺は一人、ソファーに残される。忘れる前に携帯を取り出して明日の目覚ましをセットした。


 圧縮された布団が入っているという物置の扉を開け確認すると袋に入ったカチカチの布団が立てて置いてあった。


 いつから使われてないのか分からない。外で寝るわけじゃないから一日くらいソファーでいいかと、部屋の電気を消して姿を変える。


 体から落ちた服を咥えてソファーの上に飛び乗り、服の山を枕に顎を乗せて寝そべる。



「明日は晴れるかな……」



 瞼を閉じると外敵に注意したり、姿がどうのと気を使わなで良いことに、直ぐ眠気に身をゆだねた。

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