第31話
「おいしい!!」
冷蔵庫に残っていたもので作った夜飯に大げさなってくらい感動しながら実は幸せそうに食事を口に運ぶ。
ここまで絶賛してくれると、悪い気はしない。俺も向かいの席に座ってご飯を食べ始めると、実がはっとしたように箸を置く。
「これで足りる?」
「お代わりするならまだ残ってるぞ」
「違う! 銀てすごく大食いなんじゃないの?」
満月の食事しか見たことがないからか。ここに来たときは凄い勢いで食ったからな。
棚の上に置いたノートをちらっと見て、これも記載されることなんだろうなと考えて鼻で笑う。
「満月の時は特別腹が減るんだ。普段は人間の男と変わらないと思うけど?」
人間の男が平均して一日にどれくらい食べるのか知らないが、今まで大食いだと言われたことはない。
実はホッと息を吐いて安心したように箸を取り、ご飯を食べて微笑む。
「よかった。大食いだったら養っていけない。そしたら飼え……一緒に暮らすのが難しくなるとこだった」
なにか引っかかる言い方をするが、情報をノートに書かれることはないと聞き流す。
今まで食を繋ぐためのご機嫌取りで作ったりしていた料理。
――損得なしに作ったのは初めてかもしれない。
結果的には同じなのだが、作る過程で単純に美味しいと笑顔になるかなとか、相手の機嫌を取るような下心を考えず楽しく料理していた。
いつも女に食わせてもらう食事よりも質素で味も普通だろう。だけど、いつもより満たされているように感じるのはそのせいだろうか。
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