第28話

食材を買っておくとかなんとか言っていたが、冷蔵庫を見る限り補充された形跡はない。


 ーーあの調子じゃ、買い物に行くのは無理だろうしな。


 昼飯を食ってない俺の腹が鳴り、テーブルに置きっぱなしなっていたビーフジャーキーを齧りながら考える。


 一応、家事を任されたのでキッチンの棚を片端から開けて中を確認する。



「小麦粉があるし、冷蔵庫に残っている野菜入れてシチューでも作るか」



 昔、まだ簡単に女を見つけて飯を食わせて貰えなかった頃に言われたことを思い出す。



『料理出来る男はモテるわよ』



 毎度ホテルでルームサービスやら外で食事って訳じゃない。自宅に連れて行かれることもあった。


 上手くフェロモンが使えなかった頃はやっと捕まえた女にもう一度会うなんて危険なこともあったけ。


 そんな中、ご機嫌とりは必要不可欠。生きる術の一つだ。


 こんな体では会社に入って仕事は出来ないし、空時間はたっぷりあったので図書館に入り浸って料理本などを読み込んで生きる術を学んだことを思い出す。



「図書館にはお世話になったよな……」


「銀は読書好きなの?」



 いつ部屋から出てきたのか、俺の後ろに実が立っていて吃驚する。

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