第26話

「他には何かある? ネギ類を食べると駄目とか……でも、ハンバーグ食べて平気だったもんね」



 ころころと変わる話題と実の表情に付いていくのがやっとだ。追い出した元彼のことはもういいのだろうか?



「あれ、元彼だろ? よかったのか?」


「なにが? 銀が着てる服のことだったら問題ないよ」


「それもあるけど……違う、もっと冷静に話し合ったりとかしなくて良かったのか?」



 先に手と言うか、足を出したのは実で酷い言いようだったから殴りたくなる気持ちは分からなくもない。


 だとしても暴力を振るおうとするのは、ちょっといただけないけどな――



「あんなクズと話すことなんて無い。それに、銀には関係ないでしょう」



 唇を尖らせて不貞腐れたように言う。確かに俺には関係ない話だ。


 気まずい空気のなかを携帯電話の着信音が響く。俺の携帯は音を消しているので、実のものだろう。


 手に持っていたノートとペンをテーブルに置くと、音のなる携帯電話を持って自分の寝室に行ってしまった。


――今度こそ怒らせたか?


 お互い干渉しないのが一番だともう一度、自分の心に言い聞かせ息を吐く。


 ふと、実がテーブルの上に置いていったノートに目が留まる。

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