第24話
少しして俺の背中に鈍い音と痛みが走った。反射的に「痛っ」と声にすると、突然のことに胸の中で固まっていた実が状況を瞬時に感じとり騒ぎ出す。
「銀、殴られた?! この、クズ! 銀になにすんのよ!!」
「こ、こいつが勝手に出てきたのが悪いんだろ!」
俺を挟んでぎゃあぎゃあと騒ぎだす。胸の中で騒ぐ実に「痛いから動くな」と言うと吃驚するほど素直におとなしくなった。
全然、殴られた痛みなんて俺にはないけど、実に当たっていたら痛いじゃすまなかっただろう。
――女に向けるもんじゃないよな。
実を放してゆっくりと後ろを振り返り睨みつける。男は直ぐに顔を青くしカタカタと震えだす。
どちらが上位なのか、捕食する者とされる者を本能が瞬時に悟ったのだろう。
「出て行け」
静かに言うと男は冷や汗をかきながら後ずさりする。静かにしていた実が俺の背から顔を出す。
「そのゴミ忘れないで持っていってよ!」
「わ、分かってる……」
怯えた男はボストンバックを掴み一目散に玄関へ走り、勢いよくドアを閉めて出て行った。
もう戻ってこないだろうと、息をつきハッとする。
「あっ、服! 俺が着てるやつ忘れてる」
着ている服を見ながら、なんだか申し訳ないことをした気になって溜息をついた。
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