第23話

「なんだ、もう新しい男を見つけたのか」


「関係ないでしょ!  早く出て行って!」



 実の元彼は俺を新しい男だと決めてかかり敵視している。ただの同居人だと俺が言っても、信じないばかりか火に油を注ぐことになりかねない。


――面倒くさい。


 このまま元彼の首根っこを掴んで追い出すのがいいのか? 実も出て行って欲しそうだし。


 などと考えていると男の視線はソファーの上に立つ実に移り暴言を吐く。



「お前みたいな変な女がこんな顔の良い男、どうやって捕まえたんだ? 動物的にケツでも振って誘ったのか?」


「その変な女と付き合ってたのは誰? しかも、寄りを戻そうとたった今泣きついてきたのはあんたでしょう!? この、馬鹿! クズ男!」



 怯むどころか実は言いかえし、おまけと言わんばかりに元彼の胸に前蹴りを食らわす。


 元彼はよろめきながら、さらに鋭い目で実を睨みつけ拳を震わせる。



「調子に乗んなよ! 女だからって反撃されないとでも思ってんのか!?」



 呆気にとられていたが男に不穏なものを感じて、咄嗟にその場から駆けだす。


 人間の目では瞬間移動したと勘違いする速さで移動し、ソファーに立つ実を抱きしめる。

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