第9話

テーブルに空のカップを置くと、実も手に持っていたスタンガンを置いた。



「無理強いはしないけど、昨日のご飯代ぐらいは働いて帰ってもいいんじゃない?」


「その……どうやって?」



 恐々と探るように聞くと、実が財布を取り出して中から五百円玉を出してテーブルに置く。



「腹ペコ狼に全部食べられて、昨日の夜から何も食べてないの。コンビニで四枚切りの食パン買ってきて」


「お使い?」


「そうだよ。お腹ペコペコなの早く行って来て。余ったお金は好きな物買っていいから」



 五百円をズボンのポケットに入れて上着を着ようとすると実に止められる。


 やっぱり気が変わったのかと実の顔を見ると、先ほどとは違い恥ずかしそうにもじもじ話す。



「行く前に、もう一つお願いがあるんだけど……」


「なに?」


「もう一回、変身して」



 また俺の予想は外れた。まったく意味は分からないが別に大変な願いでもないしと、立ち上がって獣人の姿になる。

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