第5話

「ねえ、あなた何者? 犬?」


「犬に見えるか?」


「う~ん。黒ヒョウ? 灰色だったしな……あっ、オオカミとか?」



 思わず椅子から立ち上がる。こいつやっぱり俺の正体を知っている。それを知っていて部屋に招いたのか?


 女は慌てる様子もなく珈琲を飲み、携帯電話を片手にいじって俺に画面を見せた。



「着ぐるみとは言わないよね?」



 携帯の画面にはソファーで寝ている俺がフサフサの尻尾や耳を生やし、狼の姿や獣人に変わる様子が動画で撮影されていた。


――夢だと言い逃れもできない。


 正体を知られたからには噛み殺してしまおうか? 獣の血が騒ぎだす。



「狼男だって言ったらどうする?」



 金色の目に鋭い牙と爪。ジワリジワリと獣人の姿に変わり、女に近づく。


 怖くて声もでないのだろう。最後のとどめとばかりに大きな鋭い爪の生えた手をのばす。

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