第5話

嘴を開けて悲鳴を上げることも翼を広げることもできず落下していく感覚に身を委ねるだけ。


 しばらくすると木の枝を折る音と体に痛みが走り、葉が多い茂る枝に弾き返され放物線を描いて緩やかに落下する。


 スピードは殺されたが地面へ落ちる痛みがなくなるわけではなく、もう間もなく体を襲うだろう衝撃にギュッと目を閉じた。



「こりゃ珍しい。今日の天気は晴れのち烏か」



 痛みではなく、聞き慣れた声が耳に入り薄く目を開くと逆さに右京の顔が見えて不覚にも安堵してしまった。


 偶然にも右京のいる場所に落ちて地面に激突寸前のところを捕まえてもらえたらしい。


 俺の両足を掴み逆さ吊りにしたまま右京は顔を顰めて鼻をひくつかせる。



「お前、なんだか臭うね」


「ぐわぁ……」



 投げ飛ばされる前から怠かった体は不満の声を出すこともかなわないほどに重い。



 その様子に右京をニヤリといつもの意地の悪い笑みを見せると足を掴んでいた手を放す。



 空から落ちるよりはましだろうが、地面にいきなり落とされ痛いと思う間もなく別の悲鳴をあげた。





「冷たい!」





 頭から水をかけられ体を震わせると残った水滴が嘴を伝ってきたので舐める。

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