第4話

嫌な予感になんとか逃げろと必死に嘴を開こうとして藻掻いていると、体を支えている禍々しい黒い翼をもつ天狗の手からザワリと嫌なものが流れてくるのを感じる。



「近頃の烏は躾がなってねえな」



 全身を包むのは紛うことなき脅しの域を超えた殺意に烏達の声が止んだ。


――殺される!


 体の震えも止まり既に自分の生死すらも過度の恐怖に分からなくなってくると、黒く不穏な風が徐々に強くなり山の木々も騒ぎ出すと烏達の悲鳴が聞こえ風に飲まれていく。


 風がやみ静かになると見知らぬ天狗の視線が俺に向けられる。



「あいつは遊び相手になれたかな?」



 意味の分からない呟きのあと俺の体を両手で挟みこみ、押し潰されるのかと胆を冷やしていたが、ぽかぽかと体が温かくなると片手が体の上から外された。



「準備は整った……俺を楽しませろよ」



 見知らぬ天狗はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべると禍々しい黒い翼を広げて空に舞い上がり俺の体を握り構える。


――まさか投げたりしないよな?


 不安は的中し思いっきり投げられ、翼を広げることもできない猛スピードで空を切りながら落下していく。

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