第3話

見たことのない大きな禍々しい黒い翼に目を奪われ、自分の意思とは関係なく体が震え嘴がカタカタと鳴っている。



「おーい! 大丈夫か?!」



 枝に留まっていた烏達がガラガラと笑いながら飛んでくる羽音が聞こえ返事をしたかったがカタカタと嘴が震えたまま何も叫べない。


――全然、大丈夫じゃない! こいつに近付くな!


 この禍々しい黒い翼を持つ者に近づくなと心の中で必死に烏達に警告を発したが、勿論それが伝わるはずもなく近くの枝に留まり騒いでいる声が聞こえる。



「どこの天狗だ!?」


「こんな奴、見たことないぞ!」



 禍々しい黒い翼を見つめながら、遠のきそうになる意識を必死に引き止めなんとか、その顔を見ようと視線をずらすと見たことあるような意地悪そうに笑う口元が見えた。



「いい頃合いだ……」



 飛んできた烏達も俺を助けた見知らぬ天狗を警戒し、ギャアギャアと威嚇して周りを飛びはじめ口々に警告を発しはじめた。



「そいつを放せ! 右京さんところのカラスだぞ!」


「そうだ! 地面に置いてどっか行け!」



 烏達がこの禍々しい黒い翼の天狗に恐怖し、精一杯の虚勢を張っているのはぼんやりした頭でも分かる。


――やっぱりあいつらも本能で危険を感じてるんだ。

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