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第23話
「幸平君は私のこと好きよね?だったら優司を殺して」
ほら、俺は殺しのリストに含まれていない。そう確信した俺の心は安堵に包まれる。
清楚で大人しそうだと思っていた璃子の目が女を強調し、俺を誘っている。
これが色目ってやつだと漠然と感じていた。
「気持ちの悪い目で幸平を見るな!」
「幸平君……優司を殺したら何でもしてあげるから」
「下衆な誘い文句だね。吐き気がする」
恋人同士だった優司と璃子が罵り合い、どちらが死ぬか決めている。
俺以外のどちらかが穴に落ちる。
今まで感じたことのない高揚感を感じ悦に入っていた。
「下衆はどっちよ! 早くこの男を殺して!!」
璃子が金切り声を上げて俺をナイフで脅すように指図し、優司から視線が外れたとき。
優司がナイフを持つ璃子の手を掴んだ――
「は、離して!」
無言で掴んだ優司の手を璃子が狂ったように振り払おうと暴れる。
それは、本当に一瞬のことだった。
璃子のナイフが鞘を見つけたように優司の腹に納まり、Tシャツに赤い花を咲かせる。
「痛って……」
優司はナイフを抑えながら膝を付いて倒れた。璃子は震えながら目を見開き、ゆっくりと口元を歪ませる。
「は、はっ! あははっ……罰が当たったのよ! ざまあみろ!」
黒い風が吹き荒み、今まで俺の中で根付いていたものを枯らせていく。
最後の芽が枯れると、俺はゆっくり地面に落ちていたシャベルを掴む。
何も無くなった俺の中には黒い穴が空いていた。
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