第22話

――優司は俺に好意を持っている?




 俺だって別に優司が嫌いなわけじゃない。ただ、友人や家族みたいな愛情だ。



優司だって同じはず。





「だから女は嫌いなんだ。勝手でなんて醜いんだろう。僕の心に土足で踏み込んでなんのつもりだよ」



「優司は最初から私のことなんて好きじゃなかったんでしょ!」



「当たり前だろ。幸平に近づかせないってこと以外、女と付き合う理由がある? 馬鹿な女は幸平にふさわしくない。幸平の側にいていいのは僕だけだ!」





 璃子の気持ちを侮蔑するように優司は鼻で笑う。ショックを受ける璃子に声を掛けようとして、口を噤んだ。



 俺が家族愛のようなものだと今更に言っても璃子は納得しないばかりか、馬鹿にされたと思うかもしれない。





「そ、そんなの認めない……」





 薄ら笑いを浮かべナイフの先を今度は俺に向けた。矛先が俺に変わったことに、肩がびくりと跳ねる。



 本能で不用意に動くのは危険だと頭のなかで警鐘を鳴らす、嫌な汗が忙しなく背中を流れていた。





「殺して」





 叫ぶわけでもなく、静かに感情のない声が響く。

 俺の頭の中に、二つの答えが浮かんでいた。




 優司を殺してなのか、私を殺してなのか――




 その中に自分は含まれていないことに、安心している自分がいた。

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