第20話
「うわぁぁぁ!!」
璃子が雄叫びを上げて優司の右手に襲いかった。この状況に璃子は発狂してしまったのだろうか。
優司は俺を振り払い璃子を自分の右手から引き離そうと殴るが、璃子に手を噛まれナイフを落とす。
まるで獣のように璃子がナイフを拾い優司と俺に切っ先を向けた。
「痛ったいな……なんで噛み付くかな」
「わ、私のほうが痛いわよ! ふざけんじゃないわよ!!」
震える声で璃子が虚勢を張り優司を睨みつける。俺は振り払われた拍子に尻餅をついて二人を見上げていた。
璃子は動揺しながらも、ナイフを俺たちに向けて必死に今の状況を理解しようと目を動かし情報を収集している。
「璃子、怪我する前にナイフ返してよ」
「なに、なんで……怪我ならもうしてる。頭が痛い! ここどこよ!?」
優司の声に璃子が苛立ち怒鳴った。俺の印象とはかけ離れた璃子の姿が、俺の恐怖を煽る
――死の瀬戸際。
すぐ横にある穴が地獄の入口に見え、悪魔が手招きして誰が落ちてくるのか舌舐りしている気がする。
璃子が向けているナイフは俺も標的になっているはず。誰が穴に入っても不思議じゃない。
「璃子ちゃん。傷の手当をしに、病院に行こう」
ゆっくりとその場から立ち上がり、無理やり笑顔を作って話しかけた。
璃子はナイフの先を優司から俺に変えて探るように見て急に笑い出した。
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