13

第18話

俺はもう一度、拳を固く握りしめ冗談を返すように軽く話す。とてもじゃないが、問い詰めて聞ける雰囲気ではない。





「俺が良いなと思えばお前の彼女になってるし、俺が好きになる暇なんてないじゃないか……」



「良かった! それじゃ、早くあれ埋めちゃおう」





 嫉妬の炎は消え、嬉嬉とした表情で側にあったスーツケースを引き寄せる。



 鍵を回して躊躇いなくスーツケースを開けた。



 反射的に瞑った目を恐る恐る開いてみると、やっぱりスーツケースには膝を抱えて横たわる璃子の姿があった。





「なんだか、まだ生きてるみたいだな……」





 ぼそりと俺がつぶやくと気のせいか、璃子の体が動いた気がした。



 優司は「まさかぁ」と璃子をスーツケースから乱暴に出して地面に転がす。




 穴に運ぼうと抱き上げようとした瞬間――




 璃子が顔を上げた。頭から流れた血が顔につき、虚ろな目でゆっくりと周囲を見渡している。



 その様子に俺は言葉を失いその場に立ち尽くす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る