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第17話
「ママはきっと別の男と出て行ったんだよ……僕を捨てたんだ!」
叫ぶように泣く優司が可哀想で見ているのが辛かった。
あの日、優司の母親を心底憎んだ。
「だから俺は優司を裏切らないで一緒にいようと思ったんだ……ごめんな」
もういない小さな優司の幻影に呟く。幼い俺には悲しむ涙を止めることしか考えてなかったんだ。
本当は一緒に泣いて、辛くても現実を受け入れて乗り越えるべきだったのに――
俺が逃げ道を作って優司の涙を止めて現実から切り離してしまった。
抱えた膝に顔を埋めて涙を流す。戻らない現実、友達を壊した罪。
「幸平! これぐらいの深さなら問題ない?」
急に掛けられた声に驚いて顔を上げると、顔に泥をつけて無邪気な笑顔を向ける優司の姿。胸の辺りまで掘った穴から俺に手を差し伸べていた。
「上がるのに手かして」
俺は言われるまま穴の縁まで歩き優司に手を掴んで引き上げる。礼を言ってシャベルを突き立てて座る優司はやっぱり変わらない。
「なぁ、なんでおばさんを殺したんだ?」
「言ったじゃん。俺には必要ないもん」
「それじゃ、璃子ちゃんはなんで……」
拳を握り震える声で優司に問うと、目を細めて不機嫌そうに口元を歪ませる。
「……好きなの?」
恋人だった璃子のことは事故だと聞きたかったのに優司の目には嫉妬の炎が燃えるばかりだった。
――妙な違和感。
最初から俺が優司を理解するなど無理な話なのかもしれない。
優司にとっての必要とは?
俺も璃子を埋めたら不必要になってしまうんだろうか――
探るような優司の視線に俺の中で恐怖が増した。
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