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第13話

俺たちが小学生の頃、見つけた秘密の場所。

 二人で廃材を集めて作った秘密基地。



 中学生に入ってから優司が俺の家にあまり来なくなってからは、秘密基地に行くことも無くなった。





「立ち入り禁止の札が立ってるでしょ? でもさ、フェンスも何もないんだから無意味だよね」



「神社が柵なんだよ」



「神様が見てますよってこと? ハハッ。俺たちにどんな罰が当たるかな」





 罰は下る。地獄行きが決定している優司には確かに無意味な柵だろう。




 でも、俺は?




 俺もやっぱり地獄行きなんだろうか?

手伝わされただけ。それではやはり許されないのだろうか。





「二人で来るの久しぶりだよね。懐かしいな」





 思い出に浸っている状況ではなかったが、確かに懐かしさはあった。



 子猫を拾って秘密基地で飼ってたっけ――



 俺の頭に一つの思い出が蘇る。そう、ここに来なくなったのは中学生になったからなんて単純なものじゃない。



 その猫がきっかけだ。誰かに殺され、それから秘密基地から足が遠のいた。悲しい気持ちを忘れるために。





「ここは、ミケのお墓もあったんだよな……忘れてたよ」



「あぁ、あの猫ね。幸平によく懐いてた……」





 優司が目を細めて、ミケを埋めた場所を睨む。草が伸びほうだいだったが、墓石はちゃんと残っている。



 猫を埋め、今は人間を埋める穴を掘っていることに切なさが込み上げた。





「どうする? もう少し奥まで行く?」



「あまり木が生えている場所じゃ、根が邪魔で穴が掘れない。人目もないし、ここにしよう」





 朽ちかけた秘密基地。この開けた場所は背が伸びた今も周りには木が茂り死角になっている。



 ボストンバックを肩から下ろし、ファスナーを開けシャベルを出す。一本を優司に投げ渡した。





「こいつ、小さいから穴もこのぐらいで良いよね」





 シャベルでスーツケースと同じぐらいの大きさを土に描く。





「あぁ、でも深さは最低1.5m掘らなくちゃ駄目だ」



「マジで!? 見えなくなればいいじゃん」



「動物が掘り返したら困る。俺は捕まりたくない」





 逃げずに手伝っていることが最大の譲歩だ。俺は日常を取り戻したい。




 ――自分を守るため。




 罪悪感は忘れるしかないんだ。俺が好きになりかけた璃子ちゃん。ゴメン。



 俺はスーツケースを見て心の中で謝った。

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