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第11話

「埋めるのは、神社裏の山だな? 秘密基地を作った場所」



「そう! 楽しかったよね! あそこ、いま立ち入り禁止になってるから誰も気づかない」



「気をつけないと目立つな……夜のほうがいいか」





 夏休みに、スーツケースを持って歩くのは問題ないにしろ山に入っていくのは目立つ。



 それにシャベルも持っていかなければならないし、死体を埋める穴も掘るんだ。




 ――頭が痛い。




 俺の家に来たときは震えていたくせに、今はケロリとしている優司が憎らしい。





「シャベルと着替えがいる。それが準備できたらもう行こう」



「暗くなるまで待たなくていいの?」



「山で穴を掘るのは時間も掛かるし、日が落ちてからじゃ作業しにくい。この暑さで死体の腐りも早いはずだから……」





 どれほどの時間で硬直したり、腐ったりするのかは分からないが早いに越したことはない。



 優司が持ってきたボストンバックに着替えと、シャベルを入れて準備する。





「なんか、探検でも行くみたいだね。食べ物とか持ってく?」



「ハハッ……地獄に探検か?」





 これから死体を持って外を歩くのだ。歩いている途中で、もしもスーツケースが開いてしまったら――



 それを思うだけでも胃から何かが込み上げ、探検などと遊び気分でいる優司の神経を疑う。



 怖いという感覚も璃子と一緒に殺されてしまったのかもしれない。



 

 スムーズになるべく人に合わないようにしなくては――





「ねえ、璃子のバックはどうする? 普通にゴミで出していいかな」



「念の為、死体を埋めた場所から離れたとこに捨てよう」





 璃子の親が失踪人届けを出して、その後どれぐらいで捜査がはじまるのか分からない。



 予想では夏休み中に捜査がはじまることはないだろう。高校生が夏休みに羽を伸ばして家に帰らないなど、よくある話だ。





「僕がスーツケース持ってくから、幸平はそっち持ってよ」



「わかった。出発前に靴を履き替えに戻ってもいいか?」





 知らない人が見れば旅行に行く二人だが、健康サンダルを履いているのは少々不自然だし、山に入って穴を掘るには不向き。



 優司は俺の顔を探るように見て、何かを思いついた様に笑った。





「靴なら僕のを貸す。サイズも変わらないんだし」



「いや、自分の靴の方が……」



「駄目! 帰って通報するつもりだろう? そんなことしたら僕、何するかわからないよ。幸平の家族も殺しちゃうかも」





 逃げ出せるかもしれいと言う薄い望みも絶たれる。ただ優司の異常さに恐怖が増しただけだった。




 俺は死体を埋めたあと本当に普段通りにもどれるのだろうか――




 冷たい汗が俺の頬を流れた。

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