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第4話
「おい! いい加減、腕を離せよ!」
あまりに強い腕を掴む力に文句を吐く。優司は蒼白な顔で俺を見て手の力を緩めたが、離す気は無いようだ。
俺の家から三軒挟んだ場所にある優司の家。文句を言っている間に玄関前に着いていた。
「入って……僕の部屋」
こうなっては、話を聞いて一刻も早く解放されるよう努めるしか無い。
家に上がるのは小学校以来だろうか――
優司の母親は美人で遊びに来ると、よくクッキーを焼いてくれた記憶がある。
だが、小学校2年の時に優司の母親は出て行った。書置き一つなく母親は優司と旦那を置き去りにし、浮気していた男と去ったのだ。
母親が居なくなり俺が優司の家に遊びに行くこともなくなった。この頃から、優司が俺の家に来て親父さんが帰宅するまで一緒にいることが多くなった。
俺の親も息子がもう一人いるぐらいの感覚で苦言を吐くことは無かったが、中学を上がった頃から優司が家に来る回数も減っていき、今に至る。
「お邪魔します」
男二人暮らしの割には片づけられた室内に慌てて履いた健康サンダルを玄関に脱ぎ捨てて家に上がる。
階段を上り優司の部屋に入ろうとドアノブを掴むと、優司が止めた。
「逃げないって約束して」
「はぁ?俺は早く帰って勉強したいんだよ」
そう言ってドアノブを回し、部屋の中を見て俺は絶句した。
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