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第2話
翌朝も俺の日常は変わらない。
エアコンが効いた部屋で問題集を解く。
昨日は気分転換のつもりが、余計なストレスを拾ったせいで勉強がはかどらなかった。
「取り戻さないと……」
窓の外を見ながらぼんやりと呟き、シャーペンを持つ手に力が入る。
問題集を始めて一時間も経たぬうちに、携帯電話が鳴り集中力が乱れた。
「チッ、誰だよ!」
携帯の液晶を見ると優司からの連絡だ。
夏休みの宿題を見せてくれとか言う、くだらない用事だろうとそのまま無視を決め込んだ。
着信は程なくして止まる。
優司に付き合っている暇はない。あいつは、できる奴なんだ。今の高校だって俺は苦労したが、優司は受験の少し前に勉強しただけで受かった。
素の能力が俺とは違って優れている。悶々とする感情を首を振って追い払うと、窓に何かが当たる音がする。
そのまま視線を留めておくと小石が窓に当たり、名前を呼ぶ声が聞こえた。
「幸平! 幸平、居るんだろう!!」
窓を開けて下を見ると小石を持った優司の姿があった。
顔を上げて俺の顔を見るなり叫ぶ。
「携帯出ろよ! とにかく、早く下降りてきて」
「悪いけど、勉強してるから……」
「早く! 頼むから出てきてくれよ!」
断って窓を閉めようとする俺に、必死な顔で懇願している。ろくでもない用事だろうとは思ったが、このまま叫ばれたら勉強どころではない。
俺は仕方なく「待ってろ」とだけ窓から言うと部屋を出て階段を降り玄関に向かった。
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