▶第2話のシナリオ
■場所(繁華街・夕方)
飲食店や風俗店。
ホテルが建ち並んでいる。
その一画に、5階建てのマンションがあった。
ボロボロのリュックを背負った春樹が、
そのマンションを見上げている。
紙人形・壱「大きなマンション」
紙人形・弐「そうだね。大きいね」
春樹の背後には、タクシーが停車している。
ほむらと凛が、タクシーから降りてくる。
扉が閉まり、タクシーは走り出す。
凛「ねぇ。何か、見えるのっ⁉」
凛とほむらが、春樹に近づいてくる。
春樹「これから、どうする気だ。
勢いで来たのはいいが」
凛「さぁ」
ほむら「呆れましたね。ノープランとは」
竜は、優雅に宙を泳いでいる。
背中には、少女を乗せている。
春樹「しょうがない。ダメ元で、その女性の部屋まで行ってみるか。部屋番号は分かるか?」
ほむら「えぇ。分かります」
春樹「じゃ、行こうか」
ほむら「はい」
春樹とほむらは、マンションの中へ入っていく。
凛「ねぇ。ちょっと待って。
置いて行かないでよっ⁉」
凛は、2人の背中を追いかける。
■場所(マンション・エレベーター内)
目的の階層は3階。
春樹は、欠伸をしている。
凛「ねぇ。どうして彼女の住所を知っているのさ。さっきは、プライベートの事は知らないって」
ほむら「何度か、彼女を家に送った事があるのです」
凛「送った事があるっ⁉」
ほむらは、口を噤み俯いてしまう。
服の裾をぎゅっと握りしめる。
竜「その者と我の主人は、元恋人同士だったのだ。恋人同士と言っても体だけの関係と言った方が、正しいか」
凛は、首を傾げてほむらを見つめる。
春樹「言いたくないのだから、無理に聞き出そうとするな。デリカシーのない奴め」
春樹は、溜息を漏らす。
服を握り締めていたほむらの手から力が抜けていく。
エレベーターが目的の階に到着。
扉が開く。
ほむらは、エレベーターを足早に降りる。
ほむら「彼女の部屋はこっちです」
竜「すまない。貴様には、感謝する」
少女は、竜から降りる。
春樹と凛は、エレベーターを降りる。
凛「……面白くない。さっきから。2人とも息がぴったり」
凛は、唇を尖らせて春樹を指で突く。
春樹「お前にだって、人に聞かれたくない秘密の1つや2つ。あるだろう?」
凛は、眉を八の字にする。
凛「……そりゃ。あるけども」
春樹「まぁ。お前の場合だったら、聞いた人間を片っ端から殴り飛ばす。か?」
春樹は、鼻で笑う。
凛「春樹の馬鹿っ⁉」
凛は、春樹を殴る。
春樹「本気で殴るな。骨が折れたら、どうする」
ほむら「きゃぁぁぁぁっ⁉」
凛と春樹の目の色が変わる。
そして、2人は駆け出す。
■場所(マンション・3階・夕方)
ほむらが、尻餅をついている。
そこへ、凛と春樹が駆け寄って来る。
少女は、春樹の背中にぶら下がっている。
春樹の息は荒い。肩で息をしている。
凛「大丈夫っ⁉」
ほむら「……っへ、変な人が。彼女の部屋にっ⁉」
竜「獣の守護霊を連れた男が居たぞ」
春樹の眉間がピクリと動く。
紙人形・壱「獣だって」
紙人形・弐「獣って言えば。あの人の守護霊も獣だね」
ほむらは、開いている玄関扉を指さす。
凛は、眉間に皺を寄せて
ほむらの指さした方向を見つめる。
部屋の中から、狼が現れる。
毛の色は、灰色。
紙人形・壱「やっぱり。あの人だ」
紙人形・弐「そうだね。あの人だね」
狼は、春樹の存在に気づく。
春樹は、眉をハの字にする。
部屋の中から、
何者かが姿を現す。
凛「女の敵は、許さねぇ。成敗してくれるっ⁉」
凛は、男を殴り飛ばす。
竜「おぉっ⁉」
紙人形・壱「殴っちゃったね」
紙人形・弐「そうだね。殴っちゃったね」
春樹は溜息を漏らす。
謎の男は、尻餅をつく。
謎の男「あぁ。痛い。まったく、今日は厄日だな」
謎の男は、埃を払い立ち上がる。
凛は、謎の男の姿を見て驚く。
黒のボロボロなロングコートを羽織り、
よれよれのワイシャツにパンツ。
汚い革靴を履いている工藤康彦。
凛「康彦じゃないかっ⁉」
謎の男は、凛を見つめ目を丸くする。
工藤「これはこれは。お嬢ではありませんか。どうして、こんなところに。それに、春樹まで」
工藤は、春樹を見つめる。
春樹は、工藤から視線を逸らす。
紙人形・壱「言っちゃったね」
紙人形・弐「そうだね。言っちゃったね」
竜「おや。お主たちの知り合いか?」
ほむらは、鋭い視線で凛や春樹の顔を見つめる。
ほむら「……っお、お嬢。ですか。あなたは。いえ、あなた方は何者ですか?」
凛は、挙動不審。
少女が、ドタバタと走り回り始める。
凛は、工藤や春樹に視線を送る。
春樹は、溜息を漏らす。
工藤「……あぁ、私は。ですね」
工藤は、困った様子で髪の毛をかきむしる。
竜「怪しい。貴様等は何かを隠している。我に隠し事をしているとは、良い度胸だ。白状しろっ⁉」
春樹「俺の親父だ」
工藤や凛は、驚いた様子で春樹を見つめる。
工藤の足元に座っていた狼が尻尾を振る。
ほむらは、春樹を見つめる。
竜「本当だな。我に嘘は通じない」
紙人形・壱「本当だよ」
紙人形・弐「本当だよ」
竜「……そうか。守護霊は、主人の分身。主人が嘘を言う事があっても。守護霊は、嘘を言えない。本当のようだな」
春樹は、息を飲む。
ほむら「そうですか。あなたのお父様ですか」
凛や工藤。春樹は、胸を撫で下ろす。
ほむら「しかし、あなたの事を『お嬢』と言った説明にはなっていません。そして、あなたは何故。彼女の部屋から出てきたのですか。そこのところの説明をお願いします」
紙人形・壱「賢いね」
紙人形・弐「そうだね。賢いね」
狼「ワォーン」
ほむらは、春樹や凛や工藤を見つめる。
3人は、お互いに顔を見合わせる。
謎の男の声「あのぉ、お話し中のところ申し訳ありません」
部屋から、警察官の格好をした男が現れる。
スキンヘッド。額には、傷がある。
温厚そうな笑みを浮かべている。
ほむら「警察の方ですかっ⁉」
ほむらは、警察官の姿に驚く。
警察官「はい。私は警察官ですよ」
警察官は、敬礼をする。
ほむら「美咲は。美咲は、見つかりましたかっ⁉」
ほむらは、警察官に詰め寄る。
警察官「申し訳ない。まだ。何も。ところで、あなたと杉本さんとのご関係は?」
ほむら「友人です」
警察官「そうですか。
此処へは、よく来るのですか?」
ほむら「……はい。月に3度ほど。でしたが」
警察官「ならば。あなたに彼女の部屋を見て欲しい。そして、何か変わった物や無くなった物はないか。私に教えてください」
ほむら「……っは、はい」
警察官は、ほむらを部屋に招く。
警察官は、工藤に微笑む。
工藤「……悪いな」
警察官「いえいえ、俺の力でよければ。いつでも力になりますよ。兄貴っ⁉」
春樹と凛は、警察官と工藤の様子を見つめる。
そして、お互い顔を見つめ首を傾げる。
(第2話 終了)
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