▶第1話のシナリオ

■場所(大学・部屋・夕方)


時刻は、4時過ぎ。


窓から差し込む夕日。


蜩が泣いている。


藤堂春樹は、ソファーに腰かけて本を読んでいる。


顔が隠れるほどの長さのぼさぼさの髪(黒)。


眼鏡。


パーカーにジーンズ。


ボロボロのスニーカーを履いている。


足元には、ボロボロのリュックが置かれている。


側では、


一ノ瀬凛がウエイトトレーニングに精を出している。


茶髪。ベリーショート。ツーブロック。


筋肉質のアスリート体型。


タンクトップに7分丈パンツ姿の凛。


室内には、


トレーニング器具がずらりと置かれている。


部屋の片隅には、


ワンピースを着た髪の長い少女が膝を抱え春樹を見つめている。


頭のてっぺんからは一本の先の丸い角が生えている。


鋭い牙や爪もある。


謎の声A「来た」

謎の声B「そうだね。来たね」


春樹の頭上を二体の紙人形が飛んでいる。


春樹は、本を閉じる。


そして、


ソファーから立ち上がり部屋から出ていこうとする。


凛「何処に行くのっ⁉」


凛は、トレーニングを中断。


タオルで汗を拭く。


春樹「飲み物を買いに」

凛「そっか。じゃ、俺のも頼むっ⁉」


凛は、ニカっと笑う。


春樹「自分で買いに行け。俺は、お前のぱしりじゃねぇ」

凛「何だよ。いけず」


春樹は、部屋から出ていく。


凛は、唇を尖らしてぶーぶー言う。



■場所(大学・廊下・夕方)


窓から差し込む夕日。


蜩が鳴いている。


春樹は、歩いている。


春樹の反対方向から、綾小路ほむらが歩いてくる。


真っ赤な髪。


長さは腰まであり、三つ編みにして肩から垂らしている。


幼さの残る顔。


ほむらの周囲を竜が泳いでいる。


全身を黄金の鱗で覆った体。


しかし、ところどころ鱗が剥がれている。


春樹と竜の目が合う。


竜「ほう。貴様。我の姿が見えるのか?」


春樹は、竜から視線を逸らす。


竜「我の勘違いか」


竜は、宙を泳ぎ出す。



■場所(大学・廊下・夕方)


ほむらは、緊張した面持ちで扉の前に立っている。


扉には、


『心霊研究会』と書かれた看板がぶら下がっている。


ほむらは、深呼吸をして扉をノック。


凛の声「はーい」


凛が扉を開ける。


凛は、カーディガンを羽織っている。


ほむらは、凛の顔を見つめて息を飲む。


凛「入部希望者。それとも、仕事の依頼かっ⁉」


凛は、ニヤリと笑う。



■場所(大学・部屋・夕方)


ほむらと凛は、ソファーに座り向き合っている。


凛は、身を乗り出す。


凛「さて、どんな仕事の依頼かな。まずは、話を聞こうじゃないかっ⁉」

ほむら「最初に言っておきます。私は、幽霊とか妖怪とか。オカルトは信じていませんっ⁉」


ほむらは、テーブルを叩く。


凛は、目を丸くする。


そして、腹を抱えて笑い始める。


ほむらは、きょとんとした表情を浮かべる。


凛「俺が、怖いかっ⁉」


凛は、ニヤリと笑いほむらに顔を近づける。


ほむらは、眉間に皺を寄せる。


ほむら「怖いですっ⁉」


ほむらは、凛を見つめる。


両者は、睨みあう。


扉が開く。


春樹が、部屋に入って来る。


春樹は、睨みあうほむらと凛を見つめる。


宙を泳ぐ竜の背に少女が跨ってはしゃいでいる。


竜「おい、降りろ。我は、気高き竜ぞ。鬼の子よ。降りろ」


少女は、竜の角を握り締め楽しそうにしている。


その様子に竜は、溜息を漏らす。


春樹「何だか。楽しそうだな」


春樹は、鼻で笑う。


凛「おかえり。春樹」

春樹「……ほら」


春樹は、に飲み物を差し出す。


凛は、満面の笑みを浮かべる。


凛「やっぱり優しいな。春樹は。愛してるぜっ⁉」


凛は、春樹に抱きつきキスをしようとする。


春樹「バカ。止めろ。人が見てるだろうがっ⁉」


春樹と凛の様子に顔を赤くするほむら。


春樹は、凛を引き剥がそうとする。


ほむらは、手で顔を覆い隠す。


しかし、指の隙間から凛と春樹の様子を伺っている。


春樹は、凛を引き剥がす。


そして、溜息を吐く。


凛「もう。春樹は、恥ずかしがり屋さんだなっ⁉」


春樹は、ほむらを見つめる。


ほむらは、身だしなみを整えて姿勢を正す。


春樹は、竜と目が合う。


竜「やはり、我の勘違いではなかったか。貴様。我の姿が見えるな」


二体の紙人形が、竜の周囲を飛び回る。


紙人形・壱「偉そう」

紙人形・弐「そうだね。偉そうだね」

竜「その紙人形は、貴様の守護霊か。貧相だな」

紙人形・壱「失礼な奴だ」

紙人形・弐「そうだね。失礼だね」


ほむらは、咳払いをして春樹を見つめる。


ほむら「初めまして。綾小路ほむらと申します」


春樹に深々と頭を下げる。


春樹は、ほむらに飲み物を差し出す。


ほむらは、飲み物に困惑。


凛「流石、春樹。彼女が、此処へ来る事を予測してたのかっ⁉」


春樹は、溜息を漏らす。


春樹「うるさいな。たまたまだ。たまたま」


春樹は、凛の横に座る。


そして、飲み物を飲み始める。


ほむらは、春樹を見つめる。


凛「どうだ。すごいだろう。心霊研究会の部長の実力はっ⁉」


ほむらは、目を丸くする。


春樹は、ジト目で凛を見つめる。


ほむら「まだ私は、あなた方の実力を疑っています」

凛「正直な奴だな。だけど、俺は嫌いじゃない」

ほむら「別に、貴女に好かれても嬉しくありません」


ほむらは、凛を睨む。


凛は、ニカっと笑う。


凛「仲良くやろうぜっ⁉」


ほむらは、溜息を漏らす。


ほむら「まぁ、ここまで来て。何もせずに帰るのは、あれなので。お話はします」


ほむらは、スマートフォンを操作。


春樹にスマートフォンを見せる。


凛「どれどれっ⁉」


凛は、スマートフォンを覗き込む。


スマートフォンには、


画像が表示されている。


ほむらを含めた男女数名が、


何処かの海辺でバーベキューをしている。


ほむら「私が、ここへ来た理由。それは、この子・杉本美咲をあなた方に探してほしいからです」


ほむらは、一人の女性をピックアップ。


画像を拡大していく。


凛「人探しね。警察に連絡は?」

ほむら「もちろんしました。だけど、相手にしてはくれません」

凛「相手にしてくれない理由は?」

ほむら「この子。昔から、家出癖があるみたいで。学生時代は、

2ヵ月も家に帰らず友達の家を転々としていた事があったみたいで。

この子の両親は、あまり心配してはいません」

凛「なるほどね。この写真を見る限り。

君は、この子との付き合いは長いの?」


ボブカットの黒髪。眼鏡の女性。


隣には、ほむらがいる。


その女性の背後には、靄が。


春樹は、画像を見つめている。


ほむら「大学からの付き合いです。だいたい1年ちょっと。ですかね。

お互い趣味があって」


ほむらは、苦笑いを浮かべる。


紙人形・壱「悪い霊に憑りつかれてるね」

紙人形・弐「そうだね。憑りつかれてる。それも、質が悪いのに」

竜「ほう。そこまで見えるのか。大した力の持ち主だ」

凛「この写真は何処でっ⁉」

ほむら「先週の休日。友人たちと一緒に海に行った時の写真です」

竜「まったく、馬鹿な連中よ。我の忠告を無視して、肝試しなどするから。

祟られたのだ」


竜は、溜息を漏らす。


紙人形・壱「この女の人。先は長くないね」

紙人形・弐「そうだね。死んじゃうね」

凛「この子が、行きそうな場所の心当たりとかは?」

ほむら「さぁ。プライベートの話は、お互いに避けていたので」

凛「なるほどね」

ほむら「……でも、彼女が住んでいた寮の住所なら」

凛「ここで話を聞いてても埒が明かないから。行ってみようかっ⁉」


凛は、拳を突き上げて席を立つ。


ほむらは、凛を見つめて目を丸くする。


春樹は、溜息を漏らす。



(第1話 終了)

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