逃走
三人は、夜の闇に紛れてフェルデンの街へと必死に逃げ込んでいた。
彼らの背後には、妖精の秘薬によって魔物のように変貌したアグラッドたちが、重い足音を立てて追いかけてきていた。
「急げ!あいつら、どこまでも追ってくる!」
コウタは息を切らしながらも叫んだ。彼の額には冷や汗が滲んでいる。
「フェルデンの街なら、衛兵たちがいるはず!そこで何とか助けを呼べるわ!」
エレナも焦りながら、街の入り口に向かって走った。
リーナは素早く後ろを振り返りながら、
「でも…あいつら、もはや人間じゃない!」
と警戒する。
しかし、アグラッドたちはもはや追い詰められた獣のように狂気を帯びており、彼らの眼にはすでに理性の光が失われていた。
アグラッドは咆哮しながら、さらにスピードを上げ、街の門を突破しようとしていた。
「衛兵たちが出てきたわ!これで何とかなるかも!」
エレナが街の門前にたどり着き、衛兵たちの姿を確認すると、すぐに助けを求めて叫んだ。
「助けて!後ろから魔物が迫ってきています!討伐をお願い!」
衛兵たちは、すぐに槍を構えてアグラッドたちに向き直った。
しかし、街に押し寄せてくる巨大化したアグラッドたちを見て、その姿を魔物だと誤認した。
「何だあれは!?魔物か!?こんなものが街に入ってくるぞ!討伐隊を呼べ!」
すぐに周囲から高位の冒険者パーティーが集まり始めた。
フェルデンのギルドは、強力な冒険者たちが集う場所でもあり、特に夜の時間帯はギルドに滞在しているメンバーが多かった。
コウタたちはアグラッドたちの姿が遠くからでも見えるようになり、その異常な巨大化した姿を目の当たりにして唖然とした。
「もはや彼らは完全に魔物になっているわ…どうしたらいいの?」
リーナが心配そうに言う。
「もう、彼らに理性は残っていない。妖精の秘薬がすべてを狂わせたんだ。私たちはここで止めるしかない。」
コウタは決意を固め、剣を握り直した。
ギルドに到着すると、高位のパーティーたちがすでに集まっていた。
衛兵たちもアグラッドたちの接近に驚き、槍を構えて戦闘態勢に入っている。
「何者だ!?お前たち、あの魔物と関係があるのか!?」
高位冒険者の一人がコウタたちに問い詰めた。
「違います!あの三人は元は人間ですが、妖精の秘薬であんな姿に変えられてしまったんです!」
エレナが必死に説明するが、混乱する状況の中では、誰も彼女の言葉をすぐには信じてくれなかった。
「何を言っている!?そんなものは聞いたことがない!あれはただの魔物だろう!討伐するしかない!」
そして、アグラッドたちがついに街の門を突き破り、巨大な姿で街の中に乱入してきた。
彼らの咆哮が響き渡り、周囲の冒険者や衛兵たちが一斉に武器を構えた。
「魔物だ!全員でかかれ!」
アグラッドたちは力任せに街を破壊しながら進んでいく。
コウタたちも剣と魔法で応戦しようとするが、その巨体と力の差に圧倒され、次第に追い詰められていった。
「くそ…このままじゃ…!」
コウタが剣を振り下ろそうとするが、アグラッドの強烈な一撃を受けて吹き飛ばされる。
「コウタ!」
エレナが魔法でアグラッドを攻撃しようとするが、彼の異常な力に防御魔法がかき消されてしまう。
「やっぱり、今の彼らはもう止められない…」
アグラッドたちは、ギルド内の高位冒険者たちに囲まれ、ついに決定的な戦闘が始まる。
冒険者たちは、アグラッドたちを魔物だと誤解し、その圧倒的な力に警戒しながらも次々と攻撃を仕掛けた。
「奴らを倒せ!魔物を討伐しろ!」
冒険者たちが次々と攻撃を繰り出す中、アグラッドはその力で何人かを吹き飛ばした。
しかし、魔法使いの強力な呪文や、弓使いの正確な狙撃が次々と彼の体を傷つけていく。
「俺たちは…こんなところで…終わらない…!」
アグラッドは狂気じみた目で叫ぶが、その体は次第に限界を迎えていた。
妖精の秘薬の効果は強大だったが、その副作用もまた甚大だった。
「…もう無理だ…この力が…限界だ…」
アグラッドが呟いた瞬間、彼の体は崩れ落ちた。
バルトとグリンも同様に、巨大化した体が次第に萎み、力尽きた。
彼らは討伐隊によって次々と攻撃され、最終的には力尽きて倒れる。
街の中での激しい戦闘は終わりを告げた。
コウタたちは、ボロボロの体でギルドの片隅に座り込んだ。
彼らは自分たちが何とか生き延びたことに安堵しながらも、アグラッドたちの末路に複雑な思いを抱いていた。
「妖精の秘薬…あれが彼らをあんなにしてしまったのね…」
エレナは悲しげに呟いた。
「彼らには、副作用の事は知らされてなかったんだろう。だから、こんな形で最後を迎えたんだろうな…」
コウタも疲れた声で応じた。
「終わったけど…私たちがこれからどうすればいいのか…」
リーナは肩を落としながら呟いた。
だが、コウタたちは一つの勝利を手にした。
悪漢三人組との戦いは終わったが、その背後に潜むもっと大きな陰謀、秘薬を作った犯人の存在がまだ残っていた。
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