護衛依頼
コウタとエレナは、リーナと共にギルドで依頼を受けるため、受付のカウンターへ向かった。
今日の依頼は、農地から街までの野菜の輸送補助と護衛というシンプルなものだ。
初心者向けの依頼ではあるが、道中で小型の魔物が現れる可能性もあるため、油断はできない。
「今日は護衛依頼だね。リーナ、お願いだからまた初心者講習を頼むよ。僕たちも成長したいんだ。」
コウタが頼むと、リーナは笑みを浮かべて頷いた。
「もちろん。しっかり教えてあげるわ。ただし、今回も油断しないでね。護衛の依頼は、一見単純に見えても、予期せぬ事態が起きることがあるから。」
エレナも頷き、
「私たちも経験を積んできたけど、護衛となると少し勝手が違うのね。」
と不安を覗かせた。
「そうだな。護衛任務は相手を守りながら戦う必要があるから、攻撃一辺倒じゃダメなんだよ。」
リーナが指導するように説明を始めた。
依頼を受けた三人は、農家から野菜を積んだ荷車を引いて、街への道を進み始めた。
農夫は、道中にリトルスネークなどの魔物が出没することがあるため、十分に警戒してほしいと伝えていた。
「まずは、野菜を積んだ荷車を守るために、位置取りが重要よ。」
リーナは、コウタとエレナに指示を出した。
「コウタは前方を警戒して。エレナ、後ろから魔物が近づいたらすぐに対応できるようにしておいてね。」
コウタとエレナはリーナの指示に従い、警戒しながら進んでいく。
「護衛依頼は、相手を守りながら自分たちも安全に進むことが大事なの。だから、焦らず、冷静に状況を見極めることが必要よ。」
リーナは二人に対して穏やかに、しかし確実に指示を出していく。
道のりの途中、草むらから不穏な音が聞こえてきた。
コウタがすぐに前方を警戒すると、見慣れた小さな魔物「リトルスネーク」が数匹、音もなく這い出してきた。
「リトルスネークだ、みんな気をつけろ!」
コウタが叫ぶと同時に、リーナが迅速に反応した。
「ここからは、私が手本を見せるわ!」
リーナは冷静にソナーを発動し、スネークたちの正確な位置を把握した。
「感覚を研ぎ澄ませて、攻撃のタイミングを計って!」
リーナが二人に声をかけると、コウタとエレナも戦闘準備を整えた。
エレナは魔法を準備し、コウタは剣を構えた。
リーナはソナーで敵の動きを完全に読み取り、素早く動いてスネークをかわしながら短剣を使って正確に攻撃を繰り出す。
一匹目のリトルスネークを簡単に倒すと、彼女は続けざまに次の魔物に向かった。
「コウタ、エレナ、これが護衛の戦い方よ。自分たちだけじゃなく、荷物も守らないといけないから、防御を優先しつつ、確実に敵を仕留めていくの。」
「すごい…リーナ、完璧に敵の位置を把握してる!」
コウタが感嘆の声を上げると、エレナもリーナのスムーズな動きに驚いていた。
「さすが斥候ね。私も頑張らなきゃ…!」
エレナは魔力を込め、リトルスネークを燃え上がる炎の魔法で一掃した。
「エレナ、やりすぎよ!護衛依頼なんだから、もっと周囲を気にして!」
リーナが注意を促しながらも、戦闘は無事に終わった。
無事にリトルスネークを討伐し、荷車を護衛しながら街に到着した三人。
農家に野菜を届けた後、依頼者の農夫が感謝の言葉を述べた。
「いやぁ、無事に届けてくれてありがとう。本当に助かったよ。お礼に、この野菜を少し持って帰ってくれ。おまけさ!」
農夫は笑顔で、コウタたちに新鮮な野菜を渡した。
「ありがとうございます!新鮮な野菜はありがたいね。」
コウタが礼を言い、リーナとエレナも笑顔で受け取った。
その帰り道、リーナがふと、戦闘の時に気づかずに服が破れてしまっていたことに気づいた。彼女は驚いて裂け目を隠そうとしたが、コウタがその様子に気づいてしまう。
「え、リーナ、服が…!」
リーナは慌てて裂け目を押さえ、顔を赤らめながらコウタに向かって
「見ないでよ!」
と叫んだ。
「ご、ごめん!」
コウタも顔を真っ赤にしながら、慌てて視線を逸らした。
その光景を見て、エレナは少し呆れたように微笑んでいた。
「コウタ、ちゃんと前を見なさい。リーナに失礼よ。」
リーナは一瞬恥ずかしそうにしながらも、冗談めかして言った。
「まぁ、仕方ないわね。でも、次からはもう少し気をつけてよ?」
「うん…本当にごめん、リーナ…」
コウタは恥ずかしさで頭を抱えながら、二人の視線を避けるように歩き始めた。
その後、三人は一息つき、野菜をもらった後で護衛依頼について振り返ることにした。
リーナは初心者講習の一環として、今回の護衛依頼の反省点を二人に伝えた。
「今回の依頼は無事に終わったけど、エレナの魔法が少し過剰だったわね。護衛では、周りをよく確認してから攻撃するのが大切よ。」
エレナは少し照れながら
「ごめんなさい、リトルスネークに集中しすぎて…気をつけます。」
と反省の意を示した。
コウタも
「僕も、もっと周囲を見渡せるようにしなきゃな。リーナ、次もよろしく頼むよ!」
と、リーナの指導に感謝の意を表した。
「もちろん。次の依頼でもしっかり教えてあげるわ。でも、その前に、まずは服を修理しないとね。」
リーナは苦笑いを浮かべながら、服の裂け目を押さえていた。
三人は少しの笑いと共に、街の喧騒へと戻っていった。
初心者講習はまだまだ続くが、リーナの指導のおかげで、二人は着実に成長していくことだろう。
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