ソナー
朝早く、コウタ、エレナ、そしてリーナの三人はギルドにて受けた次の依頼へと向かっていた。
依頼の内容は、東部の小さな森と平原にある「スティンガービー」の巣の駆除。
麻痺毒を持つこれらの蜂の巣を安全に除去するのが目的だ。
これまではリーナの初心者講習のもとで順調に冒険を進めてきたが、今回の依頼は少し難易度が上がるため、コウタとエレナは気を引き締めていた。
「スティンガービーか…麻痺毒が厄介って聞いてるけど、大丈夫かな?」
コウタは少し不安そうに呟く。
リーナは自信に満ちた表情で微笑んだ。
「心配しないで、二人とも。初心者向けの講習だし、私がちゃんとサポートするから。スティンガービーは動きが早いけど、斥候の技術を駆使すれば大丈夫よ。」
コウタとエレナは頷き、準備を整えながらリーナに付いて行った。
森に入ると、辺りにはスティンガービーが羽音を立てて飛び回っているのが見えた。
「巣はあの大きな木の近くにあるはず。麻痺に注意しながら、蜂を刺激しないようにゆっくりと近づくのが基本よ。」
リーナが教え、慎重に進んでいく。
コウタとエレナはリーナの指示を守り、森の奥へと足を進めた。
しばらく進むと、大きな木の陰にスティンガービーの巣が見えた。
巣は幹にしっかりと固定されており、周囲にはスティンガービーが数匹、警戒するかのように飛び回っていた。
「ここからが本番ね。まずは巣の位置と周囲の蜂の動きをしっかり把握して、攻撃されないように準備しましょう。」
リーナが真剣な表情で言った。
コウタとエレナは互いに頷き、ソナーの魔法を使って周囲の様子を探り始めた。
魔力を波のように広げ、木々や巣の周りにいる蜂たちの動きがはっきりと視覚化されていく。
「ソナーのおかげで蜂の動きがすぐにわかるね。これなら、どこにいるのかを正確に把握できる。」
コウタが確認する。
「ええ、これで攻撃される前に避けることができるわ。」
エレナも同意した。
その様子を見ていたリーナは、少し不安そうな表情を浮かべていた。
「あの…私でも、このソナーみたいな魔力の使い方、できるかな?」
「もちろんできるさ、リーナ。魔力の操作に慣れているなら、感覚さえ掴めば問題ないよ。」
コウタは励ますように答えた。
「私も最初は難しいって思ったけど、慣れると意外と簡単よ。試してみましょうか。」
エレナも微笑みながらリーナに助言した。
リーナは一瞬ためらったものの、意を決して試してみることにした。
「わかった…教えて、コウタ、エレナ。」
コウタはリーナの前に立ち、魔力をどう放出し、どう感覚を掴むかを説明した。
「まず、少し魔力を体の外に放出して、周囲に広がるようにイメージしてみて。それから、魔力が周りの物に当たった時の反応を感じ取るんだ。音の反響みたいなものを感じるといい。」
エレナも
「最初はわずかな反応でもいいから、焦らずにやってみて。感覚を掴んだら、どんどん正確に感じ取れるようになるわよ。」
とリーナに優しく言った。
リーナは深呼吸をしてから、魔力をゆっくりと放出し始めた。最初は何も感じ取れなかったが、少しずつ周囲の反応を捉え始めた。
「…なんとなく、わかるかもしれない。」
コウタが微笑み、
「いい感じだよ。もう少し広げてみよう。」
リーナはさらに魔力を広げ、今度はスティンガービーの巣周辺にいる蜂の動きを明確に感じ取った。
「…これ、すごい!こんな風に周りの動きがわかるなんて。」
コウタとエレナは互いに顔を見合わせ、リーナの上達の早さに驚いた。
「リーナ、すごいじゃないか!僕たちよりも感度が高いんじゃない?」
コウタが感嘆した。
エレナも
「さすが斥候ね。感覚が鋭いわ。」
と驚きを隠せない。
リーナは少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「ありがとう。でも、斥候として耳が悪くなってからは感覚に頼ることが多かったから、これがすごく助かるわ。このソナーを極めれば、斥候としての障害を克服できるかもしれない…!」
「その通りだよ、リーナ。これからもっと練習して、感覚を磨けば、斥候としてまた一線で活躍できるさ。」
コウタが力強く言う。
リーナは頷き、
「本当にありがとう、コウタ、エレナ。これなら、私もまたやれる気がするわ。」
リーナのソナーによって、スティンガービーの動きが手に取るようにわかるようになった三人は、慎重に巣に近づく。
巣の周りを飛び回る蜂たちの動きを的確に把握し、麻痺攻撃をかわしながら、リーナはコウタとエレナをサポートする。
「コウタ、右の方に一匹来るわよ。注意して!」
リーナが警告を発する。
「了解!」
コウタはすぐに身を低くして回避し、エレナがその隙を突いて巣に近づいた。
「よし、私が巣を除去するわね。」
エレナは慎重に巣の一部を剥がし、証拠として持ち帰るために布で包んだ。
その間、リーナのソナーが全方位の警戒を続け、スティンガービーの不規則な動きに即座に対応していた。
「全員無事?よし、巣は取ったから、ここから早く退却しよう!」
エレナが声を掛けると、三人は蜂に気づかれないように素早くその場を離れた。
森を抜けると、三人はほっとしたように一息ついた。
「やったね、うまくいったよ。」
コウタが笑顔で言うと、リーナもほっとした様子で頷いた。
「本当、なんとか無事に終わったわね。」
エレナも
「リーナのおかげでソナーが使えたし、これからも役立つ技術になるわね。」
と付け加えた。
三人はギルドに戻り、無事にスティンガービーの巣駆除を完了したことを報告。
今回の依頼は、リーナのソナーの技術によってスムーズに進行し、報酬を受け取った。
これからの冒険に向けて、自信と新たな技術を手に入れた三人は、さらに成長することを確信した。
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