初めての共同生活

「やっと落ち着いたなぁ…」


コウタは深く息をつき、リビングの床に座り込んだ。


「住まいを決めるって思ってたより大変ね…こんなに疲れるとは思わなかったわ」


エレナも同じように座り込み、肩を回してリラックスしようとしていた。


「まあ、これで終わりってわけじゃないけどね!」


リーナは明るく笑いながら、掃除道具を手に立ち上がった。


「新しい家に住むってことは、これからが本番さ!」


「そうだな…とりあえず、掃除しないとだな。この家、結構汚れてるみたいだし」


コウタは家の中を見渡して、埃がたまっているのを指摘した。


「ここしばらく空き家だったんだから、しょうがないわよね。誰も住んでなかったら、そりゃ汚れるわ」


エレナは苦笑しながら、窓枠を軽く叩き、舞い上がる埃を見て顔をしかめた。


「ま、掃除くらいどうってことないさ!」


リーナは笑顔を浮かべて、既にやる気満々の様子だ。


「私に任せてよ、こういうの得意だから!」


こうして3人は、それぞれ役割を分担して家の中の清掃を始めることにした。

コウタは床掃除を担当し、エレナは窓や棚の埃を拭き取る役割を担い、リーナは家具の配置や細かなところの掃除を担当することになった。


「よし、俺は床を掃除するから、エレナは窓とか頼むな」


コウタは箒を手に取りながら言った。


「了解。埃が結構溜まってるから、少し時間かかるかもね…」


エレナは窓を拭くための雑巾を取り出し、準備を始めた。


「じゃあ、私は家具を片付けるね! あと、細かいところも見て回るから、何かあったら呼んで!」


リーナは軽やかに動きながら、もうすでに掃除を始めていた。


コウタは床にたまった埃を見つけるたびに、丁寧に掃き集めていった。

家の隅々までしっかりと掃除しなければならないため、作業はなかなか進まない。

ときどき、エレナが窓を拭きながらつい手元が滑り、窓の外に雑巾を落とす姿が見えた。


「うわっ、またやっちゃった…」


エレナは顔を赤くして呟いた。


「何してんだ、エレナ?」


コウタは笑いをこらえきれずに声をかけた。


「だ、だって、窓を拭いてたら手が滑っちゃったのよ! ちょっと雑巾取ってくるわ…」


エレナは急いで外に出て、落とした雑巾を拾いに行った。


「はは、ドジっ子だな」


コウタは苦笑いしながらも、エレナが戻ってきたらちゃんと手伝うつもりで待っていた。


一方で、リーナはというと、持ち前の生活力を発揮してテキパキと作業を進めていた。

彼女は家具の配置を少しずつ変えながら、効率的に掃除をしていく。

小さな埃やゴミも見逃さずに片付け、あっという間にリビングの一角をきれいにしてしまった。


「ふふん、どう? この部屋、もうピカピカよ!」


リーナは満足げに腕を組んで自信満々に言った。


「すごいな、リーナ。やっぱりこういうこと、慣れてるんだな」


コウタは感心しながら、リーナの掃除の腕前を褒めた。


「まあね、冒険者として色んな場所に泊まるから、どこでも掃除くらいはできるようになっておかないと!」


リーナは笑顔で答えた。


「それに、住む場所が綺麗じゃないと落ち着かないでしょ? だから、ちょっと手際がいいだけよ」


「それにしても、これだけ短時間でここまで片付けるなんて、本当に助かるよ。俺たちだけじゃ、もっと時間がかかってただろうな」


コウタはリーナに感謝しながら、自分の掃除を続けた。


「ふふ、そんなに褒められると照れちゃうな。じゃあ、残りも一気に片付けちゃおうか!」


リーナはさらに意気込んで掃除を進めていった。


コウタは掃除をしながら、ふとエレナとリーナの姿をちらりと見るたびに、少し心がざわついていることに気づいた。

2人とも冒険者として日々を過ごしているため、その動きには無駄がなく、しなやかな体つきが目立つ。

特に、リーナが無邪気に掃除を進める様子や、エレナが時折ドジをしながらも頑張っている姿を見ると、コウタはなんとなく胸が高鳴るのを感じていた。


「くそ…こんなこと考えるな…」


コウタは心の中で自分に言い聞かせたが、どうしても2人に目が行ってしまう。


「コウタ、どうしたの? 顔が赤いわよ」


エレナが不思議そうに声をかけてきた。


「な、なんでもない! ちょっと暑くなってきただけだよ!」


コウタは慌てて答えたが、エレナは不思議そうに首をかしげるだけだった。


「ふーん、そうなの? でも、確かに掃除してると汗かくわよね。私も少し休もうかしら…」


エレナは額の汗を拭きながら、一旦手を止めた。


「それにしても、広い家だなぁ…これ全部掃除するのはかなり骨が折れるぞ」


コウタは改めて家の広さを実感しながら呟いた。


「でも、広い家だからこそ住みがいがあるんじゃない? それに、こうしてみんなでやれば楽しいでしょ?」


リーナは明るく笑って答えた。


「そうだな…まあ、一緒にやると確かに楽しいかもな」


コウタもつられて笑顔を見せた。


数時間が経過し、ようやく家全体の清掃が終わった。


埃だらけだった床や窓、棚はピカピカになり、家具も整然と配置され、住みやすい環境が整った。


「ふぅ…やっと終わったか。思ってた以上に大変だったな…」


コウタは腰を伸ばしながら言った。


「でも、これでようやくこの家に住めるわね。綺麗にしておかないと、落ち着かないからね」


エレナも同意しながら、椅子に腰を下ろした。


「さあ、次はご飯でも作ろうか! お腹すいたでしょ?」


リーナが笑顔で提案した。


「それはいいな! じゃあ、何を作る?」


コウタは早速キッチンに向かい、料理の準備を始めた。


こうして、3人の初めての共同生活が慌ただしくも楽しくスタートしたのだった。

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