住まい

コウタとエレナ、そしてリーナが晩餐を終えて食事処を後にすると、リーナが少し気まずそうな顔で言った。


「さて…ありがとう、本当に助かったよ。でも、そろそろ行かなきゃ…今日も外で寝る場所を探さなきゃならないから。」


コウタとエレナは顔を見合わせ、驚いた表情を浮かべた。


「また外で寝るの?それはちょっと危険すぎるよ。今夜だって、寒いし、盗賊とかもいるかもしれないし…。」


コウタが心配そうに言う。


「そうよ、リーナ。私たちもこの街に来たばかりでそんなに余裕はないけれど、なんとかなるんじゃないかしら?」


エレナも同意し、優しくリーナを説得しようとした。


リーナは少し肩をすくめて笑い、「ありがたいけど、私、今は宿に泊まるお金がないんだよ。だから外で寝るしかないの。」


コウタはしばらく考え込んだ後、ふと思いついたように顔を上げた。


「だったらさ、リーナ。一緒に安い賃貸物件を借りないか?僕たちも冒険者としてまだ生活が安定してないし、宿代もバカにならないから、いっそ一緒に住んでお金を節約するっていうのはどうだろう?」


リーナは驚いた顔でコウタを見た。


「えっ?一緒に住むの?」


「そうだよ。僕たちもまだ初心者講習が終わるまでギルドの依頼は受けられないし、しばらくは生活費を抑える必要がある。リーナも空腹で困ってるなら、宿代をみんなで割って一緒に住めば少しは楽になるんじゃないかと思って。」


エレナも頷いて、


「賃貸物件なら、一部屋借りて三人で生活すればなんとかなると思うわ。私もコウタも家庭教師の仕事で少しは収入があるし、冒険者としてもこれから少しずつ収入が入るでしょうし。リーナだって、きっとまた冒険者としてやっていけるわ。」


リーナは少し戸惑いながらも、二人の提案に耳を傾けた。


「でも、私…迷惑じゃない?一緒に住むなんて、急に言われても…」


コウタはすぐに笑顔で答えた。


「全然迷惑なんかじゃないよ。むしろ、君みたいな斥候が一緒にいてくれたら僕たちも心強いし、これからもっと良い冒険ができるかもしれない。初心者講習が終わったら、すぐに色んな依頼もこなせるだろうしね。」


リーナはしばらく黙って考えた後、ゆっくりと頷いた。


「…分かった。じゃあ、君たちと一緒に住むよ。助けてもらったし、これからは私も役に立つように頑張る。」


「それで決まりね!」


エレナが嬉しそうに微笑んだ。


コウタは少し考えた後、リーナに向かって微笑んだ。


「今すぐ賃貸物件を借りるのは難しいかもしれないけど、今夜は僕が宿代を出すから一緒に泊まろう。明日からのことはその時に考えればいい。」


リーナは驚いたようにコウタを見つめた。


「え、宿代を出してくれるの?それは、さすがに申し訳ないよ…」


「大丈夫だよ。僕もエレナも家庭教師の収入があるし、リーナが助けてくれるなら、僕たちもこれからもっと効率よく稼げるようになるはずさ。それに、僕もギルに助けられたことがあるんだ。だから、今度は僕が誰かを助ける番なんだと思うんだよ。」


エレナも微笑みながらうなずいた。


「そうよ、リーナ。私たちは一緒に頑張れる仲間が欲しいの。それに、今日みたいに外で寝るなんて、危険すぎるわ。」


リーナはしばらく考えた後、静かに頷いた。


「…ありがとう。じゃあ、今夜はお言葉に甘えさせてもらうよ。正直、外で寝るのはもう辛くてね…」


「よし、それじゃあ宿に行こう。」


コウタはそう言って、二人を宿に向かわせた。


その夜、リーナは暖かいベッドに感謝しつつ、久しぶりに安心して眠ることができた。

コウタとエレナも、これからの生活と冒険に対する期待を胸に、翌日からの新たな生活を思い描きながら眠りについた。

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