討伐の虚しさと日々

イエロースライムの討伐を続ける日々は、コウタとエレナにとって確実に身体能力を向上させてきた。

しかし、最近では討伐後に感じていたレベルアップの実感が薄れてきていた。

討伐を終えて宿に戻る頃には、以前のような疲労感や痛みはほとんど感じなくなっていたものの、その分、二人は次第に虚しさを感じるようになっていた。


「ねぇ、コウタ…最近、討伐しても前ほど強くなっている感じがしないわ。」


エレナが帰り道でふと呟いた。


コウタもその感覚を共有していた。

イエロースライムを倒すこと自体が習慣化していて、力がつくこともある種の「当たり前」になっていたのだ。

以前は討伐後の激痛や劇的な成長があり、その変化を楽しみながら挑戦できていたが、今ではその達成感が薄れていた。


「確かに、僕も同じことを感じてるよ。最初はスライムを倒すたびに体がどんどん強くなる実感があったけど…最近はなんだか、それも鈍くなってきた気がする。」


「このままスライムを倒し続けても、もう限界が近いのかもね。」


エレナは少し寂しそうに言った。


コウタもそれに同意しながら、遠くの死の山を眺めていた。

イエロースライムはその場所にしか生息しておらず、討伐してもギルドの依頼とは無関係なため、金銭的な報酬には繋がらなかった。

最初の頃は自分たちの成長に重きを置いていたが、今では成長の実感が薄れるにつれ、現実的な問題が二人を悩ませ始めていた。


「ギルドからの依頼じゃないから、スライムを倒してもお金にならないんだよね。討伐して体が強くなるのはいいけど、僕たちも生活していくためにはお金が必要だ。」


コウタは苦笑しながらそう言った。


エレナも深く頷いた。


「ええ。私たちは平日には家庭教師の仕事を続けているけど、それだけじゃ限界があるわ。討伐で力をつけても、実際にギルドの仕事をこなしてお金を稼ぐことを考えないといけない。」


二人は、平日は家庭教師として生計を立て、休日には死の山でイエロースライムを討伐するという生活を続けていた。家庭教師の仕事はギルドで受けた依頼であり、二人とも街の商家で教える立場にあった。

教えることは決して嫌いではなく、生徒たちとも次第に信頼関係を築いていったが、やはり戦いの世界とはまったく異なる環境であった。


「先生として教えるのも、悪くはないけど…やっぱり戦うことでしか得られないものがあるよね。」


コウタは、自分の力を試せる場が討伐以外にはないことに対して、少し物足りなさを感じていた。


「それに、最近はスライムを倒すたびに少しずつ無駄なことをしている気がしてきたわ。」


エレナも同じ気持ちだった。


「私たちが討伐しているスライムは、誰にも知られていないし、ギルドに報告もできない。結局、どれだけ倒しても私たち以外の誰にも評価されない。」


スライム討伐を続けてきた彼らは、冒険者ギルドにも報告できないため、その功績は誰にも知られず、二人だけの秘密として続いていた。

しかし、どれだけ討伐してもその成果を誰かに伝えることができず、お金も得られないまま日々が過ぎていった。


「イエロースライムを倒すのも、もう限界が近いのかな。討伐後に感じていた成長も鈍ってきているし、次のステップに進むべきかもしれない。」


コウタは、次なる行動を考え始めていた。


エレナも同じことを感じていた。


「そうね、私たちが次に進むべき場所があるとしたら、どこか別の危険な場所に挑戦する時が来たのかもしれないわ。でも…まだ決断は難しいわね。」


二人は討伐を続ける一方で、現実的な問題にも直面していた。

家庭教師の仕事をこなしながら、お金を稼ぐために別の手段を模索する必要が出てきたのだ。


「まずは、しっかりとお金を稼いで、次のステップに進む準備をしよう。討伐も大事だけど、現実的に生きていくためにはお金が必要だからね。」


コウタはそう言いながら、エレナに笑顔を向けた。


「そうね、しっかりとやっていきましょう。」

エレナも微笑み返し、二人は再び日常の生活に戻っていった。


こうして二人は、討伐と家庭教師という二重生活を続けながら、次なる冒険への準備を整えていくのだった。

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