討伐の日々

コウタとエレナは、再び死の山へ向かっていた。この日々が始まってから既に数ヶ月が過ぎていたが、討伐が終わるたびに身体が強くなっていく感覚を二人は感じていた。

とはいえ、その成長には苦痛が伴っていた。


最初にイエロースライムを倒したあの夜、コウタは激しい痛みで目を覚ました。

まるで体中の骨が砕けるような痛みだったが、医者に診ても原因はわからなかった。

エレナも同じく痛みに苦しみながら、それでも翌日には何事もなかったかのように回復していた。


「これが…成長の代償ってことなんだろうか?」


コウタは、眠れない夜を過ごしながらそう考えていたが、原因は分からなかった。

ただ、翌朝になると明らかに身体の調子が違うのを感じる。

力が増している、反射速度も速くなっている。

普通なら半年以上かかるような訓練を、たった一晩で乗り越えたような感覚だった。


エレナも同様に体が強くなり、二人の討伐ペースは上がっていった。

最初は一匹を倒すだけでも命がけだったが、今では数匹を一度に相手にできるほどだった。


「これだけの力がつくなんて…」


エレナは討伐の合間に感慨深げに呟いた。


「でも、やっぱり毎回の痛みには耐えがたいわね。」


「同感だよ…」


コウタも、討伐後の夜を思い出しながら苦笑した。


「でも、これを繰り返すことで僕たちは確実に強くなってる。無駄じゃないよ。」


二人はある意味でこの討伐が、二人にとっての「訓練場」となっていることに気づいていた。

もともと戦闘に不慣れだったコウタは、日々の討伐を通じて戦い方を学び、エレナもまた魔法の精度や使い方を洗練させていた。スライムとの戦闘は反射神経と技術を鍛える絶好の機会だった。


「それに、イエロースライムは他の魔物と違って比較的予測しやすい動きをするしね。相手を見極める訓練にはもってこいだよ。」


コウタはそう言いながら、戦闘スタンスを少しずつ調整し、効率よく倒す技術を身に付けていった。


一方で、エレナも魔法の精度を高めることに集中していた。

最初の頃は、魔力を大量に消費してしまい、疲れ果てていたが、今では魔法の制御が格段に上がり、少ない魔力で正確な一撃を放つことができるようになっていた。


「私たち…このペースなら、もっと強くなれるかもしれないわ」


エレナは息を整えながら、討伐したスライムの残骸を見つめていた。


「でも、どこかで限界が来るかもしれない。それが少し不安ね。」


「確かに、いつかこの成長が止まる時が来るかもしれない。でも、その時までに僕たちはできるだけの力を身に付けておかないと」


コウタもエレナの言葉に同意しながら、次の戦いに向けて準備を整えた。


このようにして、二人は一日一日と確実に強くなっていった。

討伐を繰り返すたびに、その成果が実感できるようになってきたのだ。

特に、最近では討伐後の痛みも次第に和らいできており、身体がその変化に順応しているのかもしれないと二人は考え始めていた。


「もう、最初の頃みたいに痛みで夜中に跳ね起きることもなくなったね」


コウタは笑いながらエレナに話しかけた。


「ええ、でもそれでもまだ少し体に違和感はあるわ…」


エレナは少し表情を曇らせながら、遠くを見つめた。


「だけど、私たちにとっては今が正念場なのかもしれない。どこまで成長できるか…それを見極める時が来ている気がするの。」


「確かに。今までと違うステージに立たないといけないかもね…」


コウタもその言葉に同意した。


そして、その成長の限界を試すため、二人はさらなる挑戦を決意していた。

討伐ペースを上げ、日に数十匹のイエロースライムを倒すことができるようになったのは、明らかに彼らの力が強大になっている証拠だった。

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