知識の融合

ギルドの資料室で、コウタとエレナはイエロースライムに関する情報を読み込んでいた。

周囲には「卵の腐った匂いがする」という記述があり、それが二人の興味を引いた。


「卵の腐った匂い…これは硫化水素ガスの可能性があるな」


とコウタはつぶやいた。


「硫化水素?」


エレナはその言葉を聞き返した。


「それって、どういうものなの?」


コウタは慎重に言葉を選びながら説明する。


「硫化水素ガスは、とても危険なガスなんだ。濃度が高いと無臭で、一瞬で意識を失うことがある。でも、低い濃度では卵の腐ったような臭いがするんだ。もし、このガスが原因で人々が突然死しているなら、そのガスに対抗する方法を考えないと危ないよ。」


「なるほど…。でも、そのガスにどうやって対抗すればいいの?」


エレナはコウタの説明を聞きながら不安そうに尋ねた。


コウタは少し考え込んだ後、


「うーん、僕の知ってる世界では、アルカリ性の物質を使えば硫化水素を中和できるんだ。でも、この世界でアルカリ性の素材を手に入れるのが難しそうだな…」


と答えた。


エレナは少し考えた。


「アルカリ性の素材って、具体的に何が必要なの?」


「そうだな…例えば、重曹とか…あ、でもこっちの世界だと手に入れるのは難しいかもしれない。貝殻なんかはないかな?貝殻はアルカリ性で、粉にして水に溶かせば使えるかもしれないんだけど。」


コウタは少し不安げにエレナに聞いた。


エレナはその言葉を聞いてふと思いついた。


「貝殻…そういえば、ギルドのゴミ捨て場に『カルシウムシェル』という貝殻が大量に捨てられていたわ。中身は食料にされるけど、殻は使い道がないから捨てられてるのよ。もしかしたらそれを使えるかもしれないわね。」


「それだ!」


コウタは目を輝かせた。


「カルシウムシェルなら、粉にしてアルカリ性の水溶液を作れるかもしれない。ありがとう、エレナ!それでガスマスクも作れるかもしれないよ!」


「ガスマスク?」


エレナは首をかしげた。


「それって何?」


「簡単に言うと、危険なガスを吸い込まないようにするための装備さ。貝殻の粉を布に詰めて、口元を覆えばある程度防げるはずなんだ。」


コウタは興奮しながら説明した。


エレナは微笑んで頷いた。


「本当にそんな貝殻が役立つなんてね。じゃあ、ギルドのゴミ捨て場に行ってみましょう。」


二人はすぐにギルドのゴミ捨て場へと向かった。


そこには「カルシウムシェル」の貝殻が山積みに捨てられていた。


「これだ!この貝殻を使ってガスマスクを作れるかもしれない!」


コウタは嬉しそうに貝殻を拾い上げた。


「じゃあ、一度試してみましょうか?」エレナも手伝いながら、貝殻を集め始めた。





その後、コウタは貝殻を錬金術の作業台で砕いて粉末にし、水に溶かしてアルカリ性の水溶液を作り出した。

そして、エレナと協力して、布に貝殻の粉を詰め込んで即席のガスマスクを作成した。


「これで、硫化水素ガスに対抗できるはずだ。万が一ガスが充満しても、このマスクである程度防げる。」


コウタはガスマスクを手に取りながら言った。


「でも、硫化したスライムにはどう対抗するの?」


エレナは不安そうに聞いた。


「スライムが硫化しているなら、強いアルカリ性の水溶液をかければ分解できるかもしれない。それが弱点になる可能性が高いと思う。火は危険だし、スライムが火山地帯に住んでいるなら火に強いかもしれないからね。」


コウタは慎重に言葉を選んで説明した。


エレナは頷き、決意を固めた。


「じゃあ、これで準備は整ったのね。私たち、死の山に行く準備ができたわ。」


コウタは自信に満ちた笑みを浮かべ、深呼吸をした。


「そうだ、これであの山に挑戦できる。エレナ、僕たちなら必ず成功するよ。」


こうして二人は、硫化スライム討伐のために、万全の準備を整えて次の冒険へと向かうことになった。

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