再遭遇
ギルドの扉を押し開けた瞬間、コウタの心には昨日の出来事がまだ鮮明に残っていた。
エレナが襲われそうになり、自分は何もできなかったこと。
ギルたちに助けられたが、それだけでは終わらないことも分かっていた。
彼ら悪漢三人組は確実に再びエレナを狙うだろう。
だからこそ、今日こそはギルドで情報を集め、強くなるための一歩を踏み出さなければならない。
「コウタ先生、大丈夫?」
エレナが心配そうに声をかけてきた。
「うん…大丈夫。まずはギル達と合流して、計画を立てよう」
コウタは微笑みながらも、その心中は決して穏やかではなかった。
ギルドの広間は、冒険者たちで活気づいていた。
掲示板には新たな依頼が張り出され、冒険者たちが次々とそれを確認している。
そんな中、ギル達の姿が目に入った。
昨日助けてくれた頼もしい仲間たちだ。彼らもすでに掲示板の近くで待っていた。
「コウタ、エレナ!こっちだ!」
ティナが大きく手を振って合図を送る。
コウタとエレナは足早にギル達のもとへ向かい、ティナ、ロルフ、そしてギルと合流した。
そして、そこには昨日は会えなかった一人の女性が立っていた。
「やあ、コウタ。エレナも、元気そうで良かった。昨日のことは忘れるなよ、奴らは危険だからな」
とギルが真剣な表情で言った。
「うん、ありがとう。昨日は本当に助けられたよ」
とコウタは感謝の気持ちを込めて返事をした。
その時、見知らぬ女性が一歩前に出て、優しく微笑んだ。
「はじめまして、私はマリー。ヒーラーをしてるわ。ギルから話は聞いてるわよ、昨日のこともね」
「初めまして、コウタです。そしてこちらがエレナです。よろしくお願いします」
とコウタが紹介し、エレナも軽く会釈をした。
「よろしくお願いします、マリーさん」
とエレナが微笑んで返す。
「大変だったわね。でも、ギルが言ったように、あの三人組はただの悪漢じゃないの。ギルドでも有名だけど、何故か討伐命令が下らないのよ…討伐任務もちゃんとこなしてるし、証拠が残らないから処分されないのよね」
とマリーが真剣な顔で語った。
「三人組って…昨日のあいつら、どんな連中なんだ?」
コウタが尋ねると、ティナがすぐに説明を始めた。
「あいつらの名前はアグラッド、バルト、そしてグリン。あんた達を襲った三人組さ。重装備で素早いから厄介だし、しかも狡猾で証拠を残さない。だからギルドでも問題視はされてるけど、討伐任務をしっかりこなしてるから処分もできないんだ」
「討伐任務はしてるのに、あんなこともしてるって…本当に危険な奴らなんだな…」コウタはその事実に驚き、言葉を詰まらせた。
「気をつけなよ、奴らが再び現れた時には、次は逃げられないかもしれないからね」
とティナが警告を発した。
その時、再びあの聞き覚えのある声が背後から響いてきた。
「おい、またあいつらじゃねえか」
コウタとエレナは振り返ると、そこには昨日襲ってきたアグラッド、バルト、グリンの三人組がニヤニヤと笑いながらこちらに近づいてくるのが見えた。
「昨日は楽しかったなあ、コウタ先生?また次も楽しませてくれるのか?」
アグラッドが冷たい笑みを浮かべながら挑発的に言った。
「お前ら、本当にしつこいな」
とギルが一歩前に出て三人を遮った。
「ははは、さすがギルさん。いつも俺たちの邪魔をするのはお前くらいだな」
とバルトが皮肉を込めて笑いながら言った。
「おい、あの女。昨日はよくも逃げられたもんだな」
とグリンがエレナに視線を送りながら言った。
「やめろ、アグラッド!」
ギルがさらに鋭く三人を睨む。
「なんだよ、別に何もしねえよ、今はな。ただ、次はどうなるか楽しみだって言っただけさ」
とアグラッドが肩をすくめて笑った。
三人組はギルの怒りを気にする様子もなく、ニヤつきながら再びギルドの奥へと姿を消していった。
「また…」
コウタは無力感に襲われながら呟いた。
彼は膝の震えを感じ、エレナを守る力が自分にはないことを痛感していた。
「大丈夫だ、コウタ。奴らに何かされたら、俺たちがすぐに動く。だけど、お前も強くなる必要がある。今のままじゃエレナを守りきれないだろ?」
ギルが静かに言った。
コウタはギルの言葉にうなずきながらも、胸に重くのしかかる無力感に苛まれていた。
「確かに…もっと強くならないと。でも、どうやって…」
コウタは自問した。
「そのために俺たちがいる。まずはギルドで情報を集めて、どう動けばいいか考えよう。悪漢どもを野放しにはできないし、君自身も成長しなければならない」
とギルが再び励ましの言葉をかけた。
コウタはギルの手を握り返し、強く頷いた。
今度こそ、自分を守るため、エレナを守るために成長し、力をつける決意を固めた。
「そうだね、エレナ先生はどうする?」
コウタはエレナに向かって微笑んだ。
「ええ、私も…強くならなくちゃいけないって感じています。コウタ先生、私も一緒に頑張ります」
とエレナも覚悟を決めたように答えた。
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