現今

揺らぎ

第74話

レイトさん辛かっただろうな。話している間カップを持つ手が震えていた。



 私が聞いて良い話だったのだろうか――





「あの、これ使って下さい」





 慌てて私にハンカチを差し出すレイトさん。



 その時やっと自分が泣いている事に気がついてハンカチを取るより先に自分の手で目を擦る。





「ご、ごめんなさい」





 知らないふりをしてRAINについて聞いておいて泣くなんて最悪だよ。



 泣きたいのはきっとレイトさんだ。辛かったで終わった話じゃなくて、今も辛いは続いているはず。



 レイトさんを心の内を知りたいなら、私も正直でなければ失礼だ。



 私は困った顔をして差し出しているレイトさんの手を

ハンカチごと掴みレイトさんの目をまっすぐ見た。





「ごめんなさい。私、レイトさんがRAINだって知ってました。試すような聞き方をしてごめんなさい!」





 目をギュッと瞑って頭を下げる。幻滅されているかもしれない。



 ほぼレイトさんを捕まえる様にハンカチごと掴んだ私の手は振り払われずレイトさんのもう片方の手で包まれた。





「僕も知っていましたよ。気を使って色々聞かないでくれたのでしょ?」





 顔を上げると優しく微笑むレイトさんに、また涙が流れそうになった。

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