第71話
案内をしてくれた執事のセスさんを先頭に、僕はマリアに手を引かれロジーに会いに向かう。
絵の報酬についてはオーナーがファルツさんと話してくれると言うので、任せてしまった。
「RAINここが私の部屋よ!」
マリアを僕の手を離すと、セスさんが扉を開けるよりも早く自分で開けて中に入っていった。
セスさんはマリアの行動に溜息を付き、僕の方を見ると「どうぞ」と扉を大きく開いた。
マリアの部屋はメルヘンな世界が広がっていた。壁には僕の絵が飾られている。その部屋の片隅に置かれたゲージから何かを抱き上げて振り返る。
「初めまして。この子がロジーよ」
マリアの腕の中には茶色の兎が抱かれていた。その姿が絵本の中から飛び出てきたお姫様のようで思わず笑が溢れる。
「初めましてロジー。僕はレイト。今度君を描かせて貰ってもいいかな?」
腰を落としマリアに抱えられたロジーに挨拶する。鼻をヒクヒクさせ、しきりに長い耳を動かすロジーの代わりにマリアが返事をする。
「あのね、ロジーもRAINのこと気に入ったって! 描いても良いよって言ってるわ」
「それは良かった。僕も一生懸命描かせてもらうね」
マリアは嬉しそうに笑う。僕もつられるように一緒に笑っているとセスさんが声を掛ける。
「マリア様、RAIN様。パーティーの方に……」
「駄目! RAINとまだお話するの!」
言葉を遮る様にマリアが声を上げた。セスさんの表情が変わり片眉が上がる。
「マリア様、我儘がすぎますよ」
「だって……」
ロジーに顔を埋めて小さくなっているマリアに僕は少し考えてから話す。
「マリア。僕パーティーに並んでいた料理がとっても気になってたんだ。良かったら一緒に行って僕にオススメ料理を教えてくれないかな? お話しながら一緒に食べようよ」
「わかった。RAINと一緒に戻る」
マリアはロジーに埋めていた顔を上げて少し赤い顔をしながら頷くと、ゲージにロジーを戻して僕の腕に飛びつく。
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