第70話

「今日は、ぜひRAIN君にお願したいことがあるんだよ」





 なんだろうかと気構えていると、ファルツさんの後ろのほうから可愛らしい声が聞こえた。





「おじいちゃま。その人がRAIN?」





 後ろから現れたのは、ゆるくカールした金髪に透き通るような白い肌。愛らしい青い瞳が印象的な小さな女の子。



 ファルツさんは女の子に優しく笑いかけ頭を撫でる。





「マリア。この人があの絵を描いたRAIN君だよ。挨拶しなさい」





 マリアと呼ばれた女の子は僕を探るようにジット見つめてからニッコリと可愛い笑顔を見せた。





「初めましてRAIN。私マリア」



「初めましてマリア」





 膝を付いてマリアの目線に合わせて挨拶する。マリアは少し顔を赤らめて満面の笑顔を返す。





「私ね、ロジーの絵をRAINに描いて欲しいの」



「ロジー?」





 首を傾げてマリアの話しを聞いていると、頭上からファルツさんの笑い声が聞こえ顔を上げる。




「君に頼みごとと言うのは、マリアに絵を一枚描いて欲しいんだよ」





 絵の依頼ならば願ってもない。ただマリアの言うロジーとは何なのか僕はマリアに尋ねる。





「ねえマリア、ロジーって何かな?」



「ロジーは私の友達なの。フワフワでとっても可愛いのよ」





 楽しそうにマリアは答えるがロジーの正体は分からない。

 


 フワフワってことは毛の生えた動物? 一般的に考えて犬や猫だろうか。





「ロジーのこと見せてあげる!」





 マリアはそう言って僕の手を掴んで引っ張る。僕はどうしたものかと困ってしまう。





「これ、マリア! 行儀が悪いよ」



「だっておじいちゃま! ロジーを描いてもらうのに、RAINに見せないでどうするの?」



「まだ、RAIN君に返事をもらってないよ」





 ファルツさんも困ったような表情を浮かべマリアを優しく叱る。マリアはファルツさんの言葉にしょんぼりとする。





「RAIN君。依頼を受けてもらえるだろうか?」





 こんなに僕の絵を楽しみにしているマリアを見たら断れない。僕はマリアに微笑みかける。





「上手に描けるか分からないけど、僕にロジーを描かせてもらっていいかな?」





 マリアの顔がパッと明るくなるとファルツさんもホッとした顔をしていた。

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