パーティー

第68話

大きな扉が開けられると広いエントランスホール。正面には幅広の階段。



 本や映画の中に入ったようだと錯覚しそうになる。





「いらっしゃいませ。招待状を拝見させて頂きます」





 驚いて固まっている僕に執事らしき黒いスーツの男に声を掛けられた。



 僕とオーナーは言われた通り、招待状を男に見せると少し驚いた様子で僕を見る。





「あの、なにか……」





 あまりにマジマジと見られるので、不安になって思わず聞いてしまう。





「失礼しました。RAIN様。予想よりもずっとお若い方だったので……旦那様がお待ちです。こちらへどうぞ」





 僕はそう言って歩いて行くスーツの男の背を呆然と見ていると、オーナーが小声で話す。





「東洋人は若く見られるからな気にするな。さっ、行くぞ」





 オーナーは僕の背中を軽く叩くと、上機嫌でスーツ姿の男を追いかけて歩きだす。



 僕は若く見られたことよりも、おそらく絵を買ってくれたであろう旦那様がわざわざ僕なんかを待っていることに緊張していた。




 もしかしたら、絵が気に入らなかったとか?




 返品なんて話になったら、オーナーにも申し訳ない。

僕は背筋を正して二人の背に続いた。

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