第67話

車の窓から見える歴史を感じる街並みは芸術とも言える。



 流れていく景色をぼんやりと眺めている僕に、オーナーが心配して声を掛ける。





「大丈夫かレイト? そんなに心配しないでも絵の売り込みは任せておけ。今日はパーティーを楽しめ」





 そう言って豪快に笑うオーナーに僕の緊張も少し和らぎ笑顔を返すことが出来た。



 だが感情が表情に出てしまうのはあまり褒められたものじゃない。



 気を付けないと――



 自分の気持ちを落ち着かせていると、車は丘を登って行く。



 その先には大きな屋敷と言うよりも城と言ったほうが正しい建物が見えてきた。





「もしかして、あそこですか?!」



「あぁそうだ。ファルツさんは結構、有名な家の人だよ。絵を買ったときは分からなかったから、招待状の名前を見て吃驚したんだよ」





 運転するオーナーも招待された富豪の名前に吃驚したのだと言う。



 僕だって富豪だと聞いてもまさか城に住んでるような人とは思わなかった。



 また別の緊張を感じていると、車が門を少し行くとスーツ姿の男が車を止めた。



 オーナーは車の窓を開けてスーツの男と少し話すと僕の方を見た。





「さっ、レイト着いたぞ。笑顔を忘れずにな」





 僕にウィンクをして車のドアを開けた。僕も深呼吸して車から降りた。

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