第65話
祖父と美術館を巡る日々。数日前にちょっとしたサプライズがあったが、さほど変わらない日常。
その日常をギャラリーからの一本の電話が刺激を運んできた。
「本当ですか?」
『是非RAINに会いたいと言ってるんだ』
初めて僕の絵を買ってくれた富豪が開くパーティーに招待されたのだが――
僕は少し考えさせて欲しいと電話を切った。
受話器を置いた僕に、祖父が心配そうに声をかけてくる。
「どうした浮かない顔をして?」
「絵を買ってくれた富豪が僕をパーティーに招待してくれたみたいなんだ」
「いいじゃないか。自分の絵を売り込むことも大切だよ」
祖父が言うことは最もだと思う。富豪の開くパーティーにはきっと沢山の人が来る。
そこで自分の絵を売り込むことは、これから画家として食べていこうと考えているなら大きなチャンスだ。
けれど、人付き合いがあまり得意でない僕が行ったところで売り込みなんてできるのだろうか? ダメな絵だと笑われないだろうか?
僕は悪い考えを振り払うように頭を振って溜息をついた。
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