RAIN

過去

第64話

――絵の勉強を兼ねて祖父と一緒に海外にいる時分






「私の孫が絵を描いていてね是非、一枚だけでもこのギャラリーに置いて欲しいだ」





 きっかけは祖父の知り合いがやっているギャラリーに僕の絵を持ち込んだことだった。



 断られるかと思っていたが、オーナーは僕の絵を気に入ってくれて一枚だけだったが置いてもらえることになった。





「後は、誰かがお前の絵を気に入って買ってもらうだけだな」



「じいちゃん。気が早いし買ってもらうのが一番難しいと思うんだけど」





 僕の言葉を聞いて笑う祖父。ギャラリーに置いてもらえただけでも良かったと自分の事のように喜んでくれた。



 僕も画家と呼ばれる人達と同じ場所に自分の絵が並ぶことに正直、心がどうしようもなく踊っていた。



 そして、何日もしないうちにギャラリーから連絡がきた。





『ふらっと立ち寄った富豪が、レイトの絵を気に入って買っていったよ』





 電話の一報を受け、僕と祖父は抱き合って喜んだ。

 その出来事が、僕の人生を大きく変えることになるとは全く予想していなかった。




 初めて売れた絵の代金を取りに、僕と祖父はギャラリーに向かう。





「じいちゃん。どんな人が僕の絵を買ってくれたのかな?」



「どこかの富豪だって言っていたね。お屋敷に飾ってもらえばレイトの絵をまた別の人が見て気に入ってくれるかもしれないね」




 自分のことのように嬉しそうに話す祖父。けれど、僕は嬉しい半面、そんなに甘いものではないと思っていた。



 そうは言っても、僕だってにやけた顔を隠せないほどには舞い上がっていはけどね。





「こんにちは」



「おう、レイト来たか! やったな」





 ギャラリーの扉を開けると、僕を見るなり近づいて手を握り握手をした。





「あっ、ありがとうございます」





 戸惑いながらお礼を言い、隣にいる祖父の顔を見ると優しく頷いてくれた。



 初めて絵が売れてもらったお金はけして多くはなかったけど、金額には変えられない十分過ぎる喜びがあった。

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