第57話

「レイコ大丈夫?」



「はぁ、ちょっと殴ったのはやり過ぎたわね」





 立ち尽くすレイコに声を掛けると苦笑いを浮かべた。

 少なからず、喧嘩の火種を作ってしまったことを申し訳なく思った。





「喧嘩させてごめんね。心配してくれてありがとう」



「ナオヤとはいつものことじゃない? 気にしないの。それよりも、何かあったらすぐに連絡してよ」



「うん。ありがとう」





 私はリュックとスケッチブックを持ってレイコに手を振ってアトリエを出た。



 外には私の麦わら帽子を被り頬をさすっているナオヤが立っていた。





「早くしろよ」





 むすっとした顔で先に歩いて行くナオヤの背中を追いかけた。

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