第52話

「おはよう」





 かなり早い時間でもアトリエのドアには鍵は掛かっていない。



 レイコの家の敷地にあるので、入る門は違っても登録のない人間が門を通れば分かるらしい。



 それに、おそらく番犬がアトリエの中二階に眠ってるはず。





「ナオヤいないの?」





 アトリエの中は薄暗い。電気をつけて自分の荷物を置きながら、中二階のソファーに向かって叫ぶ。



 明かりと私の叫ぶ声に、ソファーの軋む音が聞こえる。

その後に、ナオヤの眠そうな顔が覗く。





「今、何時?」



「6時42分」





 時間を答えると、ひどく嫌な顔された。

 朝早いから無理もないか。



 二度寝するのかと思ったが、そのまま大あくびをしながら起き上がると、階段を下りてきた。





「なんだ? お化けが怖くて早く来たのか?」





 何で知っているのかと一瞬戸惑ったけどレイコがここで、電話していたのだろう。





「ナオヤだって私と同じ体験したら、怖いと思うけど」



「俺は、お化けだとかそう言うものは、一切信じてないから大丈夫」





 平然と言われるとちょっとムカツク。

 私は黙って睨んでいると、ナオヤが笑う。





「なにがあったのか、詳しく話してみろよ」





 ナオヤはアトリエに置いてある小型冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して、一本を私に投げ渡す。



 テーブルと椅子が置いてある休憩場にテーブルをはさんで二人で座る。



 ペットボトルの蓋をあけて、一口水を飲んでから昨日の目玉お化けの話をナオヤに聞かせた。

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