第49話
「送ってもらうだけでも悪いのに、荷物まで持ってもらってありがとうございました」
頭を下げて、早く重い紙袋を受け取ろうと手を出したが、レイトさんはなにか迷っている様子でなかなか渡してくれない。
「あの……どうかしましたか?」
「重いので部屋まで運びます」
私はレイトさんの申し出に少し驚きながらも、ここで押し問答するより早く荷物を置いてもらったほうがいいと思い、言葉に甘えることにした。
お礼に、お茶でも飲んで行ってもらもらおう。
私は「それじゃ、お願いします」と言って部屋に案内した。
「ここです。どうぞ」
玄関の鍵を開けて部屋の電気をつけ、レイトさんを招く。
レイトさんは玄関の外で立ち止まったまま困惑した表情で、ふっと息を吐くと紙袋を玄関に置いた。
「あの、良かったらお茶でも飲んでいって下さい」
「いえ、今日はここで。こんな時間に男を部屋に上げたら危ないですよ。お友達にも叱られますよ」
片目を瞑っておどけた様に話す。
私はそれを聞いて頭にはっきりとレイコとナオヤが私を叱咤する姿が浮かぶ。
でも、レイトさんは危なくないと思うし、このまま帰すのは失礼な気もする。
私が一人考え込んでいると、レイトさんが顔を赤くしながら唐突に切り出した。
「さっき、言いかけた事なんですが……明日は喫茶店に来る前に、連絡を頂けますか?」
都合の確認をする為に電話番号を渡したのに今日も突然、友達を連れて店に行った。
顔も赤いし実際は相当、怒っているのかもしれない。
「ごめんなさい! 明日は必ず連絡します!」
「待ってます。それじゃ、おやすみなさい」
レイトさんは赤い顔のまま満面の笑顔を見せて帰っていった。
本当に優しくて大人。それに比べて私ときたら目も当てられない。
ドアに鍵を掛けて玄関で反省をする。
「はぁぁ……明日は迷惑かけないように気を付けよう」
一人、決意表明をして紙袋を抱えて部屋に移動すると
トントン――
玄関のドアをノックする音がする。こんな時間に誰だろうと考える僅かな時間も待てないと言うようにノックが繰り返される。
「はい。どちらさまですか?」
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