第48話
罪悪感ばかりが募りレイトさんの少し後ろを無言で歩く。
これ以上醜態を晒したくなくて、話しかけることも躊躇われる。
「これ全部、洋服ですか?」
自分の後ろを歩く私を振り返り、肩に掛けた紙袋の中をチラリと見ながら話す。
「そうです。すみません重いのに持ってもらって」
「大丈夫ですよ。こんなに沢山の洋服どうされたんですか?」
レイトさんは不思議そうに首を傾げる。
私はレイコから洋服を譲ってもらった旨を話した。
するとレイトさんは何かを思い出すように目を瞑った。
「もしかして、二度目に喫茶店に来た時もレイコさんの服でしたか?」
「えっ、はい」
二度目と言えばあの派手な女性がいた時だ。
私は苦笑いだったが、レイトさんは納得がいったように笑顔を見せた。
「初めて喫茶店に駆け込んで来た時と、随分と印象が違ったので驚いたんですよ」
楽しそうに話すレイトさんに、別の驚きだったんじゃないかと突っ込みそうになる。
だって意味不明に逃げ帰ったと思ったら、スケッチブックを忘れて戻って来た間抜けを見たのだから。
「似合ってませんでしたか? あまり女の子っぽい服って着なれなくて」
「可愛らしくて、とても似合っていましたよ。初めて来店された時の、初々しい服装も好きですけど」
優しい笑顔を向けられて褒められたら、お世辞だと分かっていても嬉しくて顔がにやけてしまう。
レイトさんの優しい言葉を聞いて笑顔を見るだけで、体中が熱くなってフワフワと熱気球のように浮かび上がる。
「あ、ありがとうございます」
「明日はどんな服装か楽しみですね」
「明日もいいんですか?」
「はい、ただ……」
レイトさんは答える前にその場に立ち止まった。
視線の先を追うと、またたび荘が見えた。
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