属性
伝わる想い
第43話
喫茶店のドアが閉められると、二人きりの空間に緊張が嫌でも高まる。
意識しないようにと思っても、なかなか鳴り出した胸は静かにならない。
レイトさんは入り口付近で固まっている私の横を通り過ぎ、先ほどまで私達が座っていた席の片付けに向かっていた。
「レモネード新しく入れ直しますね」
「いいです! そのまま飲みます」
声を掛けられた驚きと、まだ半分以上残っていたレモネードを思い出し、慌てて席に戻る。
テーブルは既に、食器が重ねてトレーに置かれていた。
「そんなに慌てないで大丈夫ですよ」
レイトさんは可笑しそうに笑いながら向かいの席に腰を下ろした。
「僕も少し休憩してから片付けようかな」
頬杖を付いて籠に残ったクッキーを囓る。真正面に座られて視線を向けられると、上手くレモネードが喉を通っていかない。
「ところで、二人の視察に僕は合格貰えましたか?」
からかうように尋ねられ、私は思わずレモネードを口から吐き出しそうになった。
「ごほっ……二人共、心配して……え~」
何を言っても疑っていた事実は変わらない。笑顔のまま私の言葉を聞いているが勝手に疑われて良い気分になる人はいないよね。
「あの、ごめんなさい」
「ははっ、ごめん。からかいすぎました。心配してくれる友達がいるのは素敵なことです」
レイトさんは俯いている私に優しく語りかける。
少し顔を上げると困ったようなレイトさんの顔が私を覗き込み「ごめんね」と謝った。
私も少しだけど、レイトさんを疑ったのが恥ずかしい。やっぱり優しくて外見だけじゃなく、中身も素敵な人だと思う。
胸がギュッと締め付けられる感じがして苦しい。
「それじゃ、片付け終わらせてきますね」
レイトさんに心を奪われている私をよそに、トレーに乗せた食器を持ってカウンターの奥に戻っていった。
私こんなんで、ちゃんとデッサンできるんだろうか?
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