第42話

「変わった男みたいだが、悪人ではなさそうだな。あと、今日のは貸しにしとくから」



「なにそれ。でも、ありがとう」





 ナオヤは私の頭をかき回すように撫でる。

 照れてるのかな?



 髪を整えながらナオヤを伺っているとレイコの声が聞こえる。





「それじゃ、デッサン頑張ってね」



「だから、予定を聞いてないから……」



「大丈夫ですよ。皆さんで最後です。もう閉めようと思っていたところですから」





 レイコの隣に並んで立っているレイトさんが答えた。



 さっき二人が話していたのはレイコが予定を確認してたのかも。





「フフッ、それじゃ明日ね」





 手を振りながら、ナオヤと一緒に喫茶店のドアをくぐる。





「変なことされないようにな」



「ナ、ナオヤ!!」





 振り返りざまに余計な一言を吐いて笑いながら帰っていく。



 レイコはその様子をあきれた顔で見てから、もう一度私に「じゃあね」と挨拶して帰っていった。



 二人を見送る私の後ろで、レイトさんの笑い声がする。

 ドアにclauseの札を下げると私の方を見た。





「仲がいいんですね。後片付けをするので少しの間、座って待っていてください」





 そう言って開けたままになった入口に優雅な仕草で手招いた。



 その姿が、あまりに綺麗で顔が熱くなる。私は俯きながら喫茶店に戻った。

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