第37話

カランカラン――





 ドアベルの音が聞こえレイコ、ナオヤの順でドアをくぐるとレイトさんの声が聞こえた。





「いらっしゃいませ。二名様ですか?」



「違うわ。三人よ」





 最後に入った私はナオヤの影になっていて見えないらしい。

 少しずれて、顔を見せるとレイトさんが笑った。





「いらっしゃいませ。今日はお友達を連れて来て下さったんですね」



「あっ、はい」





 私は緊張しながら返事をした。

 私達以外には店内にお客の姿はない。





「お好きな席にどうぞ」





 レイトさんに言われ、先頭のレイコが四人がけのソファーのある席に向かった。



 ナオヤは紙袋と一緒に座り、レイコと私は一緒に向かいの席に座る。




「こちらメニューになります」





 レイトさんがテーブルにすぐにやって来て、レイコから順番にメニューを渡していく。





「私、アイスコーヒー」



「俺はケーキセット。アイスコーヒーで」





 二人共メニューを見てすぐに注文をする。私だけがぼんやりとレイトさんを見上げていて遅れてしまう。





「おい、何にすんだよ」





 ナオヤが急かす。荷物を運ぶのに疲れて不機嫌なのかも。あたふたしている私にレイトさんが声をかける。





「今日はレモネードを作ったので、苦手でなければどうですか?」



「はい。それにします」



「かしこまりました。少々お待ちください」





 またしても、オススメされた物をそのまま注文してしまった自分が気恥かしかった。



 それを見透かすように、レイコとナオヤが私を見ていた。





「餌付けされてるな」



「自分の意思表示はちゃんと言わないとダメよ」





 注文するだけでこの言われよう。

 二人の審査は始まっているみたい。



 私がしっかりしないと、レイトさんに迷惑がかかるかもしれない。気合を入れ小さく深呼吸をした。





「レイコ、何か思い出したか?」



「全然」





 喫茶店に来る前にレイコが言っていたことだ。



 

 レイトさんを知っている気がする。




 レイコは肩をすくめて溜息をつく。

 知りたいような知りたくないような気になる。

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