審査

第36話

私とレイコが歩く後ろを、大きな紙袋を肩に掛けたナオヤがすこし遅れてついてくる。





「大丈夫? 少しリュックに入れるよ」



「大丈夫よ! 男なんだから力あるの」





 代わりに答えたレイコをナオヤが睨む。





「俺は力がない男だ! レイコ交代しろ」



「はぁ? もう喫茶店が見えてるんだから、頑張りなさいよ」





 はじまった―― 

 喧嘩するほど仲がいいと言うけれど、喫茶店間近で止めて欲しい。





「私が持つから……」





 ナオヤから紙袋を取ると、紙袋が地面についた。

 重い。正直これは男でも辛そうだよ。



 地面についた紙袋を抱えるように持ちなおす。

 それを見たナオヤが呆れた顔で私から紙袋を掴んで「行くぞ」と一人、喫茶店に歩いて行く。





「大げさなのよ」





 レイコはその背に舌を出していた。

 いやいや、あれ本当に重いからとレイコに話す。



 レイコと私は喫茶店の前で振り返って待っているナオヤのもとに笑いながら向かった。





「それじゃ入るわよ」





 私とナオヤに確認して、喫茶店ダ・ヴィンチの扉をゆっくり開けた。

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