新たな疑惑
第31話
ピッピッピッ――――
目覚まし時計が鳴り布団から手を伸ばして止めた。
予想していた通りに気持ちの高ぶりが収まらず、眠ったのは薄らとカーテンが明るくなりだした頃だった。
「ねむい」
大あくびをしながら起き上がる。
今日も、アトリエに行かなきゃ。レイコに相談もしたいし。
目覚まし時計の隣に置いたコースターを見る。
夢じゃないものね。
「顔洗って早く行こう!」
伸びをしながら洗面台に向かい、アトリエに行く準備をした。
昨日レイコに借りた服は、クリーニングに出してから返そう。
折角、可愛いくしてもらったのに私の行動で台無しだった気がする。
私は自分の持っている服の中では可愛らしい部類だろうチュニックにショートパンツ。麦わら帽子を被ってリュックを背負う。
コースターはズボンのポケットに入れ、スケッチブックを手に持った。
鏡の前でクルット回り、一応姿を確認してから部屋を出た。
足取り軽くアトリエに向かう。
絵が進まないことに気落ちして、アトリエに向かうのも重かった歩が驚くほど軽い。
アトリエが見える頃には、鼻歌混じりだった。
「おはよう!!」
「おはよう」
レイコが笑顔で迎えてくれる。
アトリエにはすでにナオヤもいて珈琲をのんでいた。
「よぉ。ダ・ヴィンチの愛人はどうなった?」
「ナオヤ!?」
挨拶もそこそこにナオヤが聞くと、レイコがそれを嗜めるようにナオヤの脇腹を肘でついた。
私は荷物を置きながら、ポケットからコースターを取り出しテーブルの上に乗せた。
「なんだこれ?」
「アメミヤ レイト?」
二人は持っていたカップをテーブルに置いた。
ナオヤがコースターを掴んでレイコと一緒に首を傾げて見ていた。
「少しだけ仲良くなれたかも」
二人にデレっと笑って教えると、二人は口をぽかんと開けて私を見た。
「これって、連絡先よね? なに、上手くいったのね!!」
レイコは私に飛びついて喜んでくれた。ナオヤは、なんだか難しい顔をしてコースターを眺めていた。
私はレイコを引き剥がすと、昨日の経緯を話した。
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